『100万回 言えばよかった』直木と譲、重なる悠依への想い 次々と浮かび上がる新しい謎

『100万回 言えばよかった』二人の想い

 一方で、謎に包まれていた事件の一部が明かされるシーンも。涼香(近藤千尋)が殺害される直前に、部屋を訪れていた莉桜。そこで話していたのは「ちーちゃん」について。おそらく、彼女たちが体を売ることを斡旋していた人物だろう。涼香は「私たちを助けてくれたのはちーちゃんだけだった」「お金なんていくらもらったっていい」と言い放つ。この「ちーちゃん」と呼ばれる人物こそ、涼香、そして直木の命を奪った側にいるのは間違いなさそうだ。

 さらに、涼香の爪の間から見つかった希也(永島敬三)の皮膚組織。このことから「ちーちゃん」とは、希也が出入りをしていた料理教室の千代(神野三鈴)へと繋がっていく。千代は現在でも、料理や刺繍をきっかけに少女たちとの関係性を築き、売春へと誘っているのではと想像してしまう。

 行く先々で問題を起こし、ホームと呼べる場所がなかった莉桜。彼女にとって千代の微笑みはまるで愛されているかのような錯覚を覚えるほどうれしかったのではないか。その居場所を欲するがゆえに、強烈な鎖となって彼女を縛ることになったとしても不思議ではない。

 一方で、里親の広田家で悠依と過ごした時間は、そんな闇深い利害関係などなく感じられた唯一の温かなひとときだったのだろう。悠依と笑い合った瞬間だけが、普通の少女でいられた。莉桜が夫と事実婚の条件として「財産はいらないから自由にしてほしい」というのも、お金ではない部分でのつながりにこそ、心休まるホームを感じられるのだという考えが見えるようだ。

 だからこそ、悠依には“こっち”には来てほしくないと拒絶した。それは見方を変えれば、悠依こそが莉桜の壊されたくない最後の宝物であり、失いたくないものであればあるほど弱点となる。次週の予告では、そんな悠依をちらつかせて千代が莉桜を脅している場面もあった。まだまだ事件の全容が明らかになるには時間がかかりそうだ。

 物語は進んでいるように思えて、同時並行で次々と新しい謎が浮かび上がる。なかでも、やっぱり怪しいのが、『ハチドリ』のオーナーである英介(荒川良々)。莉桜と涼香を乗せて走り去った車の運転手・グーミーのシルエットが似ているのはもちろんだが、どうも現在の言動が引っかかる。

 今回は悠依が「直木の幽霊がいる」と明かしたときの動揺っぷりが気になった。もちろん最愛の人を亡くし、急に非科学的なことを言う悠依を心配しているのかもしれないけれど。それでも、すぐさま「じゃ、事件のことわかるじゃない!」と話すあたり、悠依に寄り添って幽霊の存在を受け入れるというより、そこから真実が発覚することに危機感を覚えているかのように見えてしまうのだ。

 そして、かねてより大きな謎として注目を集めていたのが、直木がいなくなったタイミングで悠依と知り合った脳外科医の夏英(シム・ウンギョン)の存在。夫を亡くしたという共通点を持つ人と偶然に仲良くなることができるのも、なかなかの確率だ。さらにその夫が譲と瓜二つというのも不思議なめぐり合わせだ。

 そんな夏英と譲がついに対面したのだが、そこでは特に大きな進展はなし。ところが、またタイミングを図ったかのように新しい幽霊・弥生(菊地凛子)が出現する。予告映像に「夏英さんに伝えたいことがあります」と言っているところから、過去がまた一つ紐解かれそうだ。

 仮に弥生が直木よりも先に“思い残し”を解消したときには、どのように成仏していくのかが見えるのかもしれない。急に消えてしまうのか。それとも自分が消えるということを大切な人に伝えることができるのか。

 直木がどんなに「悠依には笑っててほしい」と願っても、やはり直木の気配がなくなってしまうその日には涙を流さずにはいられない。だから、ずっと直木の“思い残し”は解消されない、そういうことにして嘘でも「そばにいてほしい」と願うばかりだ。

■放送情報
金曜ドラマ『100万回 言えばよかった』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:井上真央、佐藤健、シム・ウンギョン、板倉俊之(インパルス)、少路勇介、穂志もえか、近藤千尋、桜一花、香里奈、平岩紙、春風亭昇太、神野三鈴、菊地凛子、荒川良々、松山ケンイチ
脚本:安達奈緒子
プロデューサー:磯山晶、杉田彩佳
演出:金子文紀、山室大輔、古林淳太郎
編成:中西真央、吉藤芽衣
主題歌:マカロニえんぴつ「リンジュー・ラヴ」(TOY’S FACTORY)
製作:TBSスパークル、TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/100ie_tbs/
公式Twitter:@hyakumankai_tbs
公式Instagram:hyakumankai_tbs

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる