『100万回 言えばよかった』直木と譲、重なる悠依への想い 次々と浮かび上がる新しい謎

『100万回 言えばよかった』二人の想い

 「もしも……どうしても悠依さんに何か伝えたいことがあったら。僕の体、使って。見てるのは僕の目だし、聞こえてるのは僕の耳だから非常に申し訳ないけど。直接悠依さんと話したいこと、いっぱいあるだろうし。そのときは……もう遠慮せず……僕の体使ってください」

 人のために自分の体を差し出す。それは、命の一部を譲るということ。譲(松山ケンイチ)の名前は、もしかしたらそんな彼の優しさを宿命付けたものだったのかもしれない。そして同時に、その姿勢はかつて直木(佐藤健)が弟のためにドナーとして自分の骨髄を提供したときのものとリンクしているようにも感じた。

 金曜ドラマ『100万回 言えばよかった』(TBS系)第6話は、直木と譲の重なる悠依(井上真央)への想い、そして事件のキーを握る莉桜(香里奈)の記憶が明らかになった。

「俺のことで悠依が不安になったり嫌な思いするほうが嫌なんだよ」「私、直木の横でニコニコ笑って暮らしてたいだけじゃないよ」。直木と悠依がケンカをするときは、いつだって直木が悠依を守りすぎることがきっかけだった。それは直木が命を落とし、幽霊になっても変わらない。姿が見えず、声が聞こえなかったとしても、かすかに聞こえる口笛の音があれば悠依は一生一緒に生きていけると思えた。でも、直木は違う。

「なんだよ、自分が消えるって。でも、怖いからって悠依を巻き込んで、しがみついて、あいつの人生までめちゃくちゃにするとか。ない、ありえない……! でも、だからって悠依が他の誰かととか死んでも嫌だし。そんなこと言ってる自分も嫌だし。ぐちゃぐちゃなんだよ、俺も。でも、でも……でもばっか言ってっけど。とにかく悠依には笑っててほしい。それだけ」

 自分がこの世界に浮遊していることが、悠依の幸せの足かせになることはどうしても許せない。かといって、なぜ死んだのかわからないままでは、悠依は新しい一歩を踏み出せないことも知っている。今は自分に何が起きたのかをはっきりさせ、そして悠依が次の幸せに目を向けることができるように。それが新たな恋だとは今はまだ考えたくもないけれど。ただただ悠依が笑えるようになること、ただそれだけが直木の“思い残し”なのだろう。

 そんな直木に、自分の体を差し出すほどに共鳴したのが譲だった。譲が悠依に惹かれているのは、誰の目から見ても明らかだ。しかし、その想いはシンプルな恋心とはまた違ったもののようで……。「あなたのことを好きな彼女が好きなんだ」。直木を忘れさせたいとか、自分だけを見てほしいとか、そんな独占的なものではなく、直木を想い続ける悠依をそのまま守り続けたいという愛。

 それは移植された細胞が体内で溶け合うかのように。毎日一緒にいることで、そして何度か憑依したことによって、譲の体内に直木の想いが溶け合って一体化しているようにも感じられた。その結果、実際に譲の体は変化を遂げていたようだ。突然襲われた頭の痛み。譲の姉・叶恵(平岩紙)が調べたところによると、直木の幽霊と行動を共にしていることで譲の命が削られている可能性があるという。ますます直木の幽霊とずっと一緒にいたいという願いは難しくなってきたようだ。

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