松岡茉優×古川琴音が考える、“何のために生きるのか” 初共演で感じた“特別な魅力”も

「何のために生きていますか?」

 この問いに躊躇なく答えることができる人は果たしてどれだけいるだろうか。コロナ禍によってこれまでとは違う日常を迎えた世界の中で、今まで以上にこの問いを突きつけられた人は多かったように思う。映画『スクロール』は、そんな誰もが抱える悩みに寄り添い、ときに突き放し、気付きを与えてくれる一作だ。主人公<僕>を北村匠海、<僕>の大学時代の友人・ユウスケを中川大志が演じる。

 そして、そんな2人と向き合うキャラクター、<私>と菜穂を演じるのが、古川琴音と松岡茉優だ。良質な映画やドラマには必ずと言ってもいいほど必要とされる、もっとも“信頼できる”役者である2人は、本作のメッセージをどう受け取ったのか。じっくりと話を聞いた。【インタビューの最後にはチェキプレゼントあり】

古川琴音「『スクロール』は私たちの世代の物語」

――松岡さんと古川さんは本作が初共演となります。古川さんは役者として活動される前から松岡さんの出演作を観られていたそうですね。

古川琴音(以下、古川):映画もテレビドラマも出演作はたくさん観ていました。『鈴木先生』(テレビ東京)は、当時中学生でリアルタイムで観ていて、すごく印象に残っています。

松岡茉優(以下、松岡):ありがとう! リアルタイムということは……あれ、いまいくつだっけ?

古川琴音

古川:26です。

松岡:え!? ひとつしか変わらないの!? ずっとタメ口でごめんなさい。

古川:いえいえ(笑)。出演作の中でも一番印象的だったのは『勝手にふるえてろ』です。松岡さんが演じられた良香は、“変わっている人”なのですが、ただ変なわけではなくて、キャラクターの枠組みを超えて、“痛み”を観ている人に突きつけてくる感じがあって。松岡さんが演じられるキャラクターは本当にいろんな表情をされていて、どうしてここまで細かく人間を捉えることができるんだろうといつも驚かされていました。だから、松岡さんに「役の短所をしっかり考える」とお話していただいたときはものすごく腑に落ちて。役者としての仕事を始める前は、松岡さんの出演作をいつも楽しく観ていたんですけど、仕事を始めてからは「勉強します!」というテンションで観るようになっている部分もありました(笑)。

松岡:照れちゃう。本当に嬉しい! 100万回聞かれていると思うんだけど、どういうきっかけで事務所に入ったの?

松岡茉優

古川:大学3年生のサークル活動が終わった後、就活をどうするかと考えたときに、ずっと演劇部でお芝居を続けてきて、これからもやっぱりやりたいなって。一度挑戦して駄目だったら就活に切り替えようとダメ元で今の事務所に応募しました。

松岡:今、古川さんのルーツを聞いてすごく納得しました。彼女がセリフを話すとすごく説得力があって、心に残る独特な響き方をするんです。楽器で例えると、音楽家だったら誰もが演奏したくなる名器みたいというか。もし、古川さんが演じた<私>を私が演じていたら、もっと作り込んで、ああしなきゃこうしなきゃで作品のイメージから離れてしまっていたように思うんです。でも、古川さんはとてもナチュラルに、役名がないキャラクターというのを観ている人が誰も気づかないぐらい自然に演じてらっしゃって。一緒に撮影できたのは1日だけだったんですが、彼女の特別な魅力をすごく感じていました。

古川:とても嬉しいです!

ーー本作で、松岡さんは中川大志さんが演じるユウスケと付き合うことになる、常に結婚相手を探し、幸せになるために“一生懸命”な菜穂を演じています。一方、先ほどお話にも出たように、古川さんは名前のないキャラクター<私>として、北村匠海さんが演じる<僕>の大切な人物になっていく人物を演じています。どちらも一筋縄ではいかない役柄だったと思いますが、本作を引き受けた理由はどんなところにあったのでしょうか?

古川:この表現は押し付けがましく聞こえてしまうかもしれないですが、台本を読んだときに、観てほしい人がたくさん浮かびました。

松岡:あぁ、すごくわかる。大事だよね。

古川:そうなんです。これは私たちの世代の物語だなって。社会に出るまでは、多かれ少なかれレールが引いてあったのに、あるときから突然、すべてを自分で決めて進んでいかないといけなくなる。全部が自分の責任になったときに、どう向き合うのか。それが『スクロール』には詰まっていると思っています。私自身に向けても、周囲の友人たちに向けても、観てほしいと思ったんです。

松岡:私も同じで『スクロール』は自分たちの物語と思えたこと。あとは、北村(匠海)が出演すると決めたことも大きかったですね。同世代の役者さんでも、一度も共演する機会がない方もいる中で、彼とは10年以上にわたって何作か共演している縁があって。私の中では、ずっと頼もしくて、眩しい存在です。

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