バディ映画好き必見! 『君に幸あれよ』に宿る、時代を生き延びるための“叫び”

『君に幸あれよ』はバディ映画好き必見

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、好きなバディは『東京リベンジャーズ』の「場地圭介×松野千冬」な間瀬が『君に幸あれよ』をプッシュします。

『君に幸あれよ』

 人生はいつ転落するか、そしていつ好転するかは誰にも予測できない。たとえ穏やかな日々を過ごしていても事件に巻き込まれることもあれば、失意の底にあったとしても突如救いが訪れることもある。ただし、人生が好転するときはほぼ必ず、自分以外の誰かが手を差し伸べてくれるものだ。

「俺、終わってるんすよ」

 このセリフが『君に幸あれよ』の本編で登場する瞬間、観客も大きな哀しみを感じることになる。けれど、そこには必ず救いが存在するし、いわゆる“バディ”とは、その救いをくれる“誰か”のことを指すのだろう。

 本作はヤクザを題材としたバディ映画。債権回収などの裏稼業で生計を立てていて、“狂犬”と呼ばれる主人公・真司と、常にマイペースでニヤニヤしている青年の理人の関係性がポイントだ。理人は強面の真司に対してもグイグイと距離を縮め、髪型やジャケットを勝手にお揃いにしたり、一度も吸ったことがないタバコを真似して(しかも真司のものを勝手に)吸ったりする。冷徹なはずの真司が毎回ツッコミを入れるのがかわいらしいし、主人公に手を差し伸べる側がとんでもなく不思議な人物なのが面白い。

 理人は極度のストレートネックで常に顔が前に出ていて歩き方もふらふらしていて、さらに小学生レベルの文法でしか言葉を話さない。少し間違えると“ただの間抜け”にしか映らない役を、髙橋雄祐が周囲からかわいがられる人物として一貫性を持たせていた。そんなキャラクターだからこそ、真司がどん底にあるときに気取ったりせずに海に連れ出して「元気出た〜?」なんて言って、優しく心に触れてあげることができるのだ。理人がいつもマイペースでいるからこそ、真司は心を開くことができた。2人でバイクに乗って気持ちよさそうに駆けるシーンには強いカタルシスを覚えずにはいられない。

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