高橋一生の“前に進めない主人公”はなぜ魅力的なのか 『6秒間の軌跡』が描く愛おしい時間
脚本家の橋部敦子が描くのはいつも繊細な心の持ち主だ。星太郎もまた、手間暇かけて作った花火がなかなか上げられない今の状況を、「かわいそうなのは花火」と“花火の気持ち”に寄り添い、嘆く人とは違う感性を持っている。他にも、航がいつも読んでいた新聞を捨てられなかったり、航が死んでから一度も彼の部屋の窓を開けていなかったり、橋部は何気ないエピソードを通して心優しい星太郎の人柄を伝えてくれる。
また憎めないのは、高橋が演じているのも大きいだろう。一見物腰が柔らかく、落ち着いた大人の男性だが、言葉の端々に少年心が滲み出ている。そんな高橋だからこそ、大人と子どもを行き来する可愛い中年像を体現できるし、年下の本田とも、年上の橋爪とも抜群のコンビネーションを見せることができるのだ。
特に橋爪とは、どこまでが台詞で、どこからがアドリブなのか分からないやりとりを披露しており、思わず素で吹き出す場面も度々見受けられる。第3話からはドラマの本編終了後に、橋爪が視聴者からのお悩みに答える「航さんに聞いてみよう」のミニコーナーがスタート。今回は緊張への対処法を聞かれ、橋爪が「私は掌に高橋一生と書いて(呑み込み)、ぺっと吐きます」と回答した。その後ろで高橋が必死で笑いを堪えている姿が映っていたが、本編もそんなふうに星太郎がみんなから容赦なくいじられ、より魅力を増していく。周りの人たちに尻を叩かれて少しずつ前に進む、40代にして成長過程にある星太郎をいつまでも見守っていたい。
■放送情報
土曜ナイトドラマ『6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の憂鬱』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:30〜0:00放送
出演:高橋一生、橋爪功、本田翼
脚本:橋部敦子
監督:藤田明二(テレビ朝日)、竹園元(テレビ朝日)、松尾崇(KADOKAWA)
ゼネラルプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、山形亮介(KADOKAWA)、新井宏美(KADOKAWA)
制作著作:テレビ朝日
制作協力:KADOKAWA
©テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/6byoukannokiseki/
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