『舞いあがれ!』チームIWAKURAが繰り広げる“全員野球” 俳優陣のアンサンブルを味わう

『舞いあがれ!』IWAKURAの心地よさ

 さて、言わずもがなだが、いまの「IWAKURA」は彼らだけで成り立っているわけではない。浩太の意志を継ぐ者たちが何人もいるのだ。彼・彼女らが集まって、チームはようやく機能する。

 同じく朝ドラの『まんぷく』(2018年後期/NHK総合)にて“塩軍団”の一員としての好演が未だ鮮明な榎田貴斗が演じる営業担当の藤沢哲、現在は下北沢で舞台『海と日傘』(駅前劇場にて1月29日まで上演)に立っている大浦千佳が演じる事務員の山田紗江。かつて『カーネーション』(2011年後期)でヒロインの幼少期を演じた経験のある二宮星が演じる職人の土屋景子。一度はリストラされたものの「IWAKURA」の成長により復帰が叶った職人・小森富雄役の吉井基師、舞に仕事の誇りを教えた梱包担当の西口役のマエダユミ、日高役の林英世、入江役の那々實あぐりーー。劇中の彼・彼女らに「IWAKURA」における役職があるように、『舞いあがれ!』においても各々のポジションがある。そしてそれをまっとうするには、俳優として“自分がどうありたいか”ということ以上に、“チームをどうすべきか”ということに主眼を置かなければならない。

 「IWAKURA」のメンバーは、誰もが“個”を押し出すことなく、“全体”として存在することに徹している。主張の強い俳優が一人でもいれば悪目立ちし、作品の印象を損なうことにも繋がるはず。場合によっては撮影が進まない、なんてこともあるだろう。常に全力投球ではダメであり、抜くところは抜かなければならない。この力加減をチーム一丸となって調整している面白さが、いまの『舞いあがれ!』にはある。俳優陣の良質なアンサンブルを楽しめるタームなのだ。「IWAKURA」が再起に至った4年という時間を私たちは知らない。しかしそれは、彼・彼女らが互いに向け合う視線や声に確実に表れている。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK

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