『舞いあがれ!』チームIWAKURAが繰り広げる“全員野球” 俳優陣のアンサンブルを味わう
朝から胸が熱くなる展開が続く朝ドラ『舞いあがれ!』(NHK総合)。ヒロイン・舞(福原遥)が父の遺志を継ぐべく家業であるネジ工場「IWAKURA」に入社してから4年の時が経過し、傾いていた経営状況は回復、物語は第17週から新章に突入した。そんな熱き展開を支えているのが「IWAKURA」の面々。みんなで力を合わせての、まさに全員野球が繰り広げられているところだ。
舞の父・浩太(高橋克典)の急逝により、揺れた「IWAKURA」。母・めぐみ(永作博美)がどうにか自らを奮い立たせようとしている姿は、観ていて非常に辛いものだった。テレビの前のお茶の間からは声をかけることもできない。視聴者である私たちも彼女と同じように暗い日々を過ごしたのではないだろうか。作劇と演出の妙によるものが大きいものの、人が崩れ落ちそうな限界のところで生きることを体現してみせた永作の姿がそうさせたのだろう。そこへ差し込んだ一本の希望の光。そう、「IWAKURA」への舞の正式な参加と、そこからの彼女の活躍ぶりである。母を支え、父の遺したものを守っていくために矢面に立って奮闘する姿に、私たちも「IWAKURA」の面々も、立ち上がらないわけにはいかなかったのだ。
「IWAKURA」の中心人物としてまず挙がるのが、浩太のいないこの工場の“大黒柱”と呼ばれる笠巻さん(古舘寛治)と、ここでネジ職人としてのいろはを学んだ章兄ちゃん(葵揚)である。二人は本作の放送開始時から登場している、文字通りの“古株”。舞がパイロットを目指していた頃まではあくまでも“彼女の物語の背景”として存在している印象があったが、「IWAKURA」にフォーカスするようになってからは、この作品そのものの中心人物になっている。
舞の願いに応えるかたちで章兄ちゃんがカムバックした第16週は彼の“主役回”といえるほどスポットが当たったが、古舘と葵も物語の序盤から控えめな演技に徹し、常に岩倉家を支える存在として登場し続けてきた。何度も何度も、舞たち家族との丁寧なキャッチボールを続けてきた。彼らのそのスタンスが変わらなかったからこそ、物語が「IWAKURA編」に突入してからも安心して観ていられるのだ。主演の福原や永作が変化球を投げたとしても、彼らは確実に受け止める。どこかで彼らが作品の世界観を壊すような演技をし、もしそれが許されていたならば、現在のような胸熱な展開にはならなかっただろう。自身の役割を把握し、それを追究していくのが“職人”というものなのだ。