桑原亮子による貴司の短歌は『舞いあがれ!』の“北極星”に めぐみと舞、異なる“強さの型”

貴司の短歌は『舞いあがれ!』の“北極星”に

 第76話で、めぐみが悠人に投資をしてもらったことによって、会社を大きく成長させて収益を獲得していかないといけないという、巨大な負荷を自分にかけることになると、「力湧いてきた」と言う。じつにたのもしい。だが、福原遥の口ぶりはふわっと柔らかで、なにわのど根性ものとは一線を画す。例えば、『カーネーション』の尾野真千子や『芋たこなんきん』の藤山直美だったら、もっと声にも身体にも込めて「よっしゃ」と奮起する演技をするだろう。でも福原は違う。彼女は人力飛行機に乗っていた頃からずっと、華奢な身体で、ささやき声で、でもガッツを示してきた。一見、おとなしそうで非力そうに見えてもたくましい人はいるもので、舞は強さの型にはまっていないところが魅力である。昭和的なめぐみだけだといつもの朝ドラになるし、令和的な舞だけでも歯ごたえがややなくなるところ、ふたつを掛け合わせているところが『舞いあがれ!』の強みになってきた。

 お局キャラ的な山田(大浦千佳)もちょっと異色である。ただの意地悪キャラでなく、舞を批評する目線を担当していて、『まれ』における希(土屋太鳳)を「人生なめすぎ〜」と批評していた陶子(柊子)的存在であるわけだが、陶子と比べると、仕事をバリバリやっているわけではなく、合コンに勤しんでいるという、経済的な負担を伴侶にもとめようとするタイプである。そういう人がいてもいい。それに、そういう性質だからこそ情だけでは動かない。舞が本気かお嬢様の気まぐれなのか、厳しく見極め、会社の役に立つとわかると協力的になるという、徹頭徹尾、現実的である。もしかしたらすごく情に厚い人なのかもしれないが、最初にあまりにも舞に対して理不尽だったことを踏まえ、単純に実はいい人と捉えてしまうと逆に山田という人物の深みがなくなってしまう。例えるならNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の三浦義村(山本耕史)のような部類に属しているのが山田である。それもまた、三毛猫のようなもので、色が混ざらずに、それぞれの色(生き方)を貫きながら、でも調和しているということなのである。浩太の遺したIWAKURAはたぶん、そういう世界なのだ。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK

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