『舞いあがれ!』横山裕が見た高橋克典の背中 “歩みノート”が悠人の救いに?

『舞いあがれ!』悠人と浩太の複雑な親子関係

「そら、ええ夢や。いつか行こうな」

 家族4人で飛行機に乗り、空を旅している。幼き日の舞(浅田芭路)が見た夢はおそらく叶わずじまいだった。

 1月4日から再開した『舞いあがれ!』(NHK総合)。まだ正月気分が抜けない私たちを待ち構えていたのは、あまりに辛い現実だった。

 リーマンショックの影響で経営難に陥った「株式会社IWAKURA」。社長である舞の父・浩太(高橋克典)は会社と社員を守るために奔走したが、無理がたたり、再建を待たずして帰らぬ人となる。

 飛行機の部品を作って、パイロットになった舞(福原遥)が操縦する飛行機に乗せたい。その暁には工場をさらにでっかくして、苦労をかけた妻のめぐみ(永作博美)に楽をさせてあげたい。そして、悠人(横山裕)ともいつか分かり合えたら。

 週末、誰もが困惑する頭で浩太の無念や後悔を思った。残された家族はこのやるせなさを抱えたまま、「会社をどうしていくか」という問題に向き合わなければならない。おそらく、工場は売った方がいいとする悠人の気持ちは変わらず、浩太の思いを受け継ごうとする舞やめぐみと対立することになるのだろう。

 舞より3歳年上の兄・悠人。初登場時は中学受験を控えた小学6年生だった。大学時代に出会い、祥子(高畑淳子)に反対されながらも駆け落ち同然で結婚した浩太とめぐみ。ある種、ロマンチストなふたりのもとに生まれてきた長男の悠人は誰よりもリアリストだ。

 舞が見た夢の話を聞き、冒頭の言葉をかけた浩太に幼い頃の悠人(海老塚幸穏)は「期待せんと待っとく」と言った。自営業者である両親は忙しく、幼少期から悠人は寂しい思いをしてきたのだろう。悠人の台詞からは「どうせ」という諦念と、「でも、もしかしたら」という期待の両方が感じられた。生まれながらにリアリストだったわけじゃない、そうならざるを得なかった理由が悠人にはあるのだ。

 朝ドラではヒロインの人生に影響を及ぼしやすい両親の存在に注目が集まる。こと父親に関しては、“良い父親”か、“悪い父親”かのどちらかで語られることが多い。後者でいえば、『おちょやん』(NHK総合)でトータス松本演じるテルヲが“朝ドラ史上最低の父親”とSNSを中心に話題となった。

 借金で子どもたちに迷惑をかけながら、自身は一丁前に酒やギャンブルを楽しむ。そういう分かりやすいダメ親父っぷりが、浩太には一切ない。家族や社員に対して横柄な態度を取ることはせず、いつも朗らか。働き者で大人になっても夢を持っている、ヒロインである舞にとっての目標となってくれる人。誰もが好きになってしまう“お父ちゃん”で、ゆえに彼の死がお茶の間に大きな哀しみをもたらした。

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