『君の花になる』8LOOMが教えてくれた大切なこと 誰かを応援するすべての人たちに花丸を

『君の花になる』すべての人たちに花丸を

 そんな8LOOMのメンバーに、あす花を含めた周囲の大人たちが助言するのは「悔いを残さないこと」だった。社長の花巻(夏木マリ)も敏腕チーフマネージャーの香坂(内田有紀)も、弾の作る“8LOOM最後の曲”を無理に急かすことはしない。愛されマネージャーのケンジ(宮野真守)も解散にショックを受けながらも、彼らの意思を尊重し最後までとことん付き合う覚悟を見せる。どんな決断をしたとしても、それが「100全力」なのであれば心から応援する。その愛情こそが、見失われがちな最も尊い宝物なのだろう。

 ツアー最終日の朝、慣れない手つきでおにぎりを握る香坂の隣で、弾はようやく気づいたように思えた。これまで1人でやってきたようなつもりでいた活動が、どれだけの人の愛情に支えられてきたものなのか。そして“最後の曲”として納得した楽曲ができなかったのは、どんな気持ちよりも「8LOOMを続けたい」という思いが強かったからだ、ということが。

 そしてツアー最終日に弾の口から8LOOMYに告げられた解散発表と、その撤回。正直、このドラマで一番花丸を付けたいのは8LOOMYだ。ファンはいつだって「100全力」でアーティストを応援している。記念すべき1stツアーの最終日なんて、ツアーの「終わり」であっても、アーティストとしての歴史の「始まり」の意味合いが強い。そんな未来への希望いっぱいなタイミングで「解散」なんて言葉が出るのもショックだったはず。にもかかわらず8LOOMYは歌い、逆に8LOOMを励ますのだから。そして3年間、グループの完全復帰を待ち続けた展開が描かれる。

 満を持して7人揃った8LOOMが歌う「君の花になる」を聴きながら、アーティストが花としてファンを元気づける歌なのかと思った。しかし、時としてアーティストにとってもファンは花になるのだと気付かされる。誰もが、誰かの花になれるということ。たとえ、自分自身に花丸をつけることができなかったとしても。

 この世界はいつだって、たった一つの正解なんて見つからない。だからこそ、誰もが手探りで歩んでいる。ときには頑張ったのにパンクしてしまったり、その環境から逃げ出さなくてはならなくなることもある。でも、人生は続いていく。大事なのは、そのときそのとき心から納得して歩み続けること。

 弾たちのように一度、口にした決断を覆したっていい。迷っていることそのものをさらけ出したっていい。多少、周りを振り回してしまったとしても、あす花や香坂、花巻社長やケンジ、そして8LOOMYのように「応援したい」と言ってくれる人はいるはずだから。

 現実の世界でも、アーティストグループの解散や活動休止といった話題が事欠かない。お休みをしているメンバーの復帰やグループの完全復活を待っている人も少なくない。そんな今、このドラマは誰かを応援するすべての人たちに花丸を付けてくれる作品になったのではないだろうか。

■配信情報
火曜ドラマ『君の花になる』
Paraviにて配信中
出演:本田翼、高橋文哉、宮世琉弥、綱啓永、八村倫太郎、森愁斗、NOA、山下幸輝、志田彩良、菊田竜大(ハナコ)、川津明日香、木南晴夏、宮野真守、内田有紀、竹中直人、夏木マリ
脚本:吉田恵里香
プロデューサー:黎景怡、宮﨑真佐子
演出:坪井敏雄、加藤尚樹、宮崎陽平
製作著作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/kiminohananinaru_tbs/
公式Twitter:@kimihana_tbs
公式Instagram:kimihana_tbs
公式TikTok:@kimihana_tbs

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