北条義時×北条政子の残酷で生々しい人生の肯定 『鎌倉殿の13人』最終回に寄せて

『鎌倉殿の13人』最終回に寄せて

 また、第47回において、頼朝(大泉洋)の形見である小さな観音様が、再び登場したことも興味深い。それは頼朝の死後である第26回、鎌倉を去ろうとする義時を引き留めた政子が彼に持たせたものである。その後、頼家(金子大地)の死後である第34回で一旦泰時の手に渡ったものが、再び義時の手に戻ってきた。これは何を意味するのか。鎌倉殿を巡る「髑髏」の物語が終わり、もう1つの象徴である観音様が示すいわば「頼朝スピリット」の継承の物語がここで復活し、今後の行方を問う。そしてそれは、比企尼(草笛光子)が幼い頼朝に渡したものであるという、その因縁は、義時の命運を左右するのか、しないのか。

 「大丈夫、かっこいいままでは終わらせません」と政子が言った。「鎌倉思いの義時」の人生は人々に受け入れられ、政子と泰時が御家人たちを鼓舞し、「未来永劫西の言いなりになるか、戦って板東武者の世を作るか」と語りかけた大団円の第47回終盤。それはまさに、義時が政子から観音様を受け取った第26回において、義時が理想としていた鎌倉の構図を思わせる。

 「鎌倉の中心には、誰とでも隔てなく接することのできる姉上」政子がいて、今彼女は意図せずして、宗時の野望と同じ言葉を用いて頼朝の作った鎌倉を守ろうとしている。傍らには“太郎”泰時がいて、“五郎”時房(瀬戸康史)もいる。ここにきて全てが整ってしまった。しかしそれではやはり「かっこよすぎる」のである。笑いを常に忘れない一方で、決して美しくない、時に残酷で生々しい、何より人間の感情に重きをおいたこの大作のフィナーレには。まだまだ終われない、北条義時の生き様を、目の当たりにしよう。

脚本家・三谷幸喜の真髄がここに 『鎌倉殿の13人』特集

作品のタイトル、および主演・小栗旬が発表されたのは2020年の1月8日。歴代の大河ドラマの中でも人気作である『新選組!』『真田丸…

■放送情報
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK

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