『silent』夏帆と風間俊介の手話を通した芝居の攻防が心を打つ 繊細に描かれた人間関係

『silent』夏帆×風間俊介芝居が心打つ

 ただ一緒にいたいから一緒にいる。それだけのシンプルなことが、どうしてこんなにも難しいのだろうか。『silent』(フジテレビ系)の第8話では、春尾(風間俊介)と奈々(夏帆)の輝くような出会いから胸を締め付けられる別れまでが描かれる。一方で、紬(川口春奈)と想(目黒蓮)もまた、乗り越えなくてはならない壁にぶつかっていた。

 春尾と再会した奈々は、出会った当時のことを振り返る。8年前、大学院生の春尾はパソコンテイク(音声をパソコンで文字にすること)のボランティアをしていた。最初は、就職活動に有利だからとはじめた春尾だったが、奈々の “ニコッと音が聞こえてきそうな笑顔”に惹かれ、奈々の顔を見て話すために手話を覚える。そして奈々がより生きやすくなればいいと手話を仕事にすることを志し、学校に手話サークルを立ち上げようともした。しかし奈々は、そんな春尾の姿を偽善のように感じてしまい怒りをぶつけるのだった。春尾はそんな過去を噛み締めながら、紬が抱える悩みの相談に乗る。

 誰かのために何かをしてあげたい、という気持ちは時としてうまく伝わらず人を苦しめることもある。どこまでが善意でどこからが偽善なのか、それは奈々が「どう受け取るかはこっちが決めること」と言うように、相手がそう受け取ってしまったら、それをその場で覆すのはとても難しいことだ。

 『silent』では、サポートする人とサポートされる人の関係を繊細に描いている。「好きだから何かをしたい」という気持ちは春尾が秘めていた奈々への大きな愛の、ある種の表れ方であり、最大の愛情表現でもあった。しかし2人はすれ違ってしまった。より多くの対話ができていれば、より強い信頼関係が築けていれば乗り越えられたのだろうか。強く惹かれあっていた2人の想いが通じない苦しさに心が痛む。春尾を演じる風間俊介は手話を使いながらも怒りや悔しさを勢いよく表す。奈々を演じる夏帆とのその芝居の攻防があまりにリアルで、視聴者の心を強く揺さぶった。

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