平野紫耀主演『クロサギ』など秋ドラマでも豊作 ダークヒーローが活躍する作品の系譜

平野紫耀らダークヒーローの物語に注目

 2つ目は、ダークヒーローを通して悪徳にまみれた現実を描くタイプの作品。『仁義なき戦い』シリーズなどのヤクザ映画がこれにあたる。デスゲームものの『カイジ』シリーズやNetflixドラマ『イカゲーム』などもこの要素が大きい。振り込め詐欺をテーマにした杉野遥亮主演の『スカム』(MBS/TBS)もそう。言うまでもなく、このタイプの作品で近年の大ヒット作が山田孝之主演『闇金ウシジマくん』(MBS/TBS)である。

 反社会的な人間たちが跋扈する悪徳の世界は、視聴者が生活する現実と地続きでもあり、怖いもの見たさのスリルや、もし自分がそのような世界に放り込まれたらどうサバイブするかを想像する一種の「転生もの」の要素もある。作中に登場する落伍者たちを反面教師にすることもあれば、上から見下ろして蔑むという暗い楽しみ方もあるだろう。

闇金ウシジマくん外伝 闇金サイハラさん
『闇金ウシジマくん外伝 闇金サイハラさん』©︎2022 真鍋昌平・山崎童々・小学館/ドラマ「闇金サイハラさん」製作委員会・MBS

 近年の『闇金ウシジマくん』から『闇金サイハラさん』にかけては、視聴者だって薄氷を踏み抜けば悪徳の世界に真っ逆さまに落ちてしまうリアリティがあり、ヒリヒリ感は一段と増してきている。そんな中、たくましく生き抜くダークヒーローを見てカタルシスを感じたり、コンプライアンスを真っ向から無視して振る舞うダークヒーローに痛快さを感じていたりする視聴者も多いだろう。朝ドラの主人公がルールを押し付けてくる飲食店に「うるせえ!」と怒鳴り返したらたちまちSNSが炎上するが、ダークヒーロー(『闇金サイハラさん』ならマキタスポーツ演じる村井)がやっても誰も文句は言わないのだから。

 3つ目は、悪党にも事情があることを描いたエピソード0的な作品。『バットマン』シリーズに登場する狂気の悪党ジョーカーの原点を描く映画『ジョーカー』がその最たるものだ。『DORONO』は、もちろんこのタイプ。『101匹わんちゃん』の悪役クルエラの若き日を描いた映画『クルエラ』、『眠れる森の美女』の世界を魔女の視点で描いた映画『マレフィセント』なども近いだろう。

DORONJO / ドロンジョ 90秒 スペシャル予告映像【WOWOW】

 『ジョーカー』に顕著だが、このタイプの作品は主人公の成育環境や社会の歪みがダイレクトに反映される。視聴者はダークヒーローが生まれる過程を目の当たりにし、自分と照らし合わせながら時にダークヒーローに共感する。社会の歪みを感じている人ほど、その裂け目から生まれてくるダークヒーローに自分自身を重ねて見てしまうのかもしれない。

 ダークヒーローは社会の写し鏡だ。世の中に法で裁けない巨悪が蠢き、警察の手が及ばない悪徳の世界が広がっていくほど、ダークヒーローは魅力的に見える。そして社会の歪みから、また新しいダークヒーローが生まれていく。社会が汚れれば汚れるほど、漆黒の中でダークヒーローたちは鈍く輝くのだろう。

■放送情報
金曜ドラマ『クロサギ』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:平野紫耀(King & Prince)、黒島結菜、山本耕史、坂東彌十郎、船越英一郎(特別出演)、三浦友和、
原作:黒丸、夏原武(原案)『クロサギ』シリーズ(小学館刊)
脚本:篠﨑絵里子
プロデューサー:武田梓、那須田淳
演出:田中健太、石井康晴、平野俊一
製作著作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/kurosagi_tbs/

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