持ち家or賃貸に悩む人も必見!? 稀有なバランスの娯楽作『奈落のマイホーム』
住宅・不動産問題は韓国映画のトレンド?
シンクホールという災害を主題にしつつ、本作では韓国の住宅・不動産問題にも風刺の視線が向けられている。ここ数年の韓国映画ではよく見るモチーフで、一種のトレンドなのかもしれない。ソ・ユミン監督のスリラー『君だけが知らない』(2021年)には、住宅バブルの崩壊を象徴するようなマンション建築予定地の廃墟が、血なまぐさい事件の舞台として登場する。また、今年の釜山国際映画祭で上映された社会派ブラックコメディ『Dream Palace(英題)』(2022年)では、マンションの設備不良を直すのに住民全員の了承を得なければならない難儀なシステム、建物の欠陥を訴えたくても資産価値の下落を嫌がる住民に阻止されるといった不条理が描かれる。似たようなやりとりは『奈落のマイホーム』でもギャグを交えて描かれるが、これらもやはり笑うに笑えない現実の反映だ。
様々な現実がそうであるように、『奈落のマイホーム』で描かれる惨事も、避けられなかった運命とは決して言いきれない。ずさんな安全管理に対する警鐘、経済を優先して人命をないがしろにする体質への問題提起も、この映画の大事なエッセンスである。
現代社会において「持ち家か、賃貸か」という選択肢は、経済的事情などを超越して、もはや人生観を表す指標なのかもしれない。あくまでマイホームにこだわるドンウォンたちの世代と、その価値観からの解放を選ぶ若者世代をともに映し出す『奈落のマイホーム』は、そうした時代性も切り取っているのではないだろうか。
■公開情報
『奈落のマイホーム』
11月11日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
監督:キム・ジフン
出演:チャ・スンウォン、キム・ソンギュン、イ・グァンス、キム・ヘジュン
配給:ギャガ
英題:Sinkhole/2021年/韓国/カラー/ビスタ/5.1chデジタル/114分/字幕翻訳:根本理恵
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