『舞いあがれ!』刈谷×玉本×鶴田、3人の人間性を見せる秀逸な脚本 バードマンの絆が尊い

『舞いあがれ!』バードマンの尊い絆

 舞(福原遥)が骨折した由良(吉谷彩子)の代わりにスワン号のパイロットになることが決まった。NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』第22話では、そんな舞を飛ばせるために「なにわバードマン」のメンバーたちがぶつかる。

 パイロットになることになった舞を「由良でさえ難しかったのに、お前が飛べるわけなか」と認めない刈谷(高杉真宙)。そして彼の言う通り、2カ月という期限がどれだけ厳しいものなのか、サークルのメンバーの様子や、舞が求められる過酷な条件から窺い知れることになる。

 舞は毎日通学時にも自転車で体力をつけようと気合満タン。しかし、由良と体型の違う舞がパイロットになるということは、設計士たちにとっては飛行機の作り直しを意味していた。4cmも身長差がある舞のサイズを測り終えた後、先輩たちはその時点で設計の変更が大変になりそうだと理解していたにもかかわらず、「トレーニングに行っといで」と舞を笑顔で送り出すのが優しい。「大丈夫や、俺がなんとかする」と頼もしいのは、玉本(細川岳)。しかし、全体を作り直すのではなく、ペダルの位置を変えるのかなど部分的な変更で重心を動かそうとする玉本の考えに、胴体班やプロペラ班、それぞれがその変更を押し付け合う事態に。「これがほんまに最善策なんですか」と詰められ、玉本は考え直す。あれだけみんなが笑顔でやれてこられた「なにわバードマン」のメンバーたちがピリピリする状況下で、舞はとにかく申し訳なさそうにしていた。

 そして彼女は入院する由良のもとを訪れようとする。しかし、そこで「なにわバードマン」に顔を出さなくなった刈谷と再会した。刈谷は「自分の設計が由良を傷つけてしまった」と思い詰めていた。一方で、由良は自分の操縦が原因だったこと、刈谷のせいじゃないと一生懸命伝える。それでも腑に落ちない刈谷は、由良の代わりにパイロットになると言った舞にいい顔をしない。あれだけトレーニングをした由良でさえ怪我をしたのに、ど素人の舞にも危険な目に遭わせられないからだ。

 舞は「なにわバードマンの空気が悪い」と相談しながら、「事故が自分のせいやと思てはるから怖くなったんですか」と核心的なことを聞く。刈谷も思わず、「確かに怖くなったかもな」「責任は重か」と本音を漏らすが、すかさず舞は「けど、その責任があっても設計をやりたいとも待ったんですよね」と迫った。子供の頃から、舞はこういう鋭い部分があったが、そんな彼女に少し驚きつつも刈谷は自分が「なにわバードマン」に入った経緯を話して聞かせてくれた。

 飛行機の設計に興味があると話してしまったばかりに、鶴田(足立英)に部室に連れて行かれたこと。1回目の選抜ですぐにやめたのに、下宿まで来られて設計士を頼まれたこと。「あいつは人を巻き込むのがうまいからなあ」と、迷惑そうに思い返すも、その表情から読み取られるのは鶴田に対する圧倒的な信頼だ。「俺の飛ばす飛行機はお前に設計してほしい」、腐れ縁のように続く刈谷と鶴田の関係性が美しい。

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