豪華キャストによる演技合戦が圧巻! 『アムステルダム』の合言葉が意味するもの
「アムステルダム」。映画のタイトルにもなっているその言葉は、3人組のメインキャラクターが劇中で何度も口にする、想い出の土地の名前である。
『アムステルダム』は、第一次世界大戦の最中に出会った医者のバート(クリスチャン・ベール)と弁護士のハロルド(ジョン・デヴィッド・ワシントン)、アーティストのヴァレリー(マーゴット・ロビー)が1933年のアメリカ・ニューヨークで再会し、とある陰謀に巻き込まれていく物語。自身の恩師の死を突然知らされたバートとハロルドは、その自然死を疑う恩師の娘リズ(テイラー・スウィフト)から彼の解剖を依頼される。しかし、その結果は思いもよらない陰謀につながり、彼らは命を狙われてしまう。
監督を務めたのは『アメリカン・ハッスル』や『世界にひとつのプレイブック』、『ザ・ファイター』などで知られるデヴィッド・O・ラッセル。この3作で計25部門もアカデミー賞にノミネートされた鬼才だ。そんな彼が7年ぶりの新作の題材に選んだのは、あり得なさそうであり得る“ほぼ”実話。ベールが演じる医師、ワシントンが演じる弁護士、そしてロビー演じるアーティストも実在する複数の人物がベースになっている。そして彼らが物語の中で力を借りに行くロバート・デ・ニーロ演じるギル・ディレンベック将軍も、実際にその時代で最も名誉を受けた米国海兵隊の英雄、スメドリー・ダーリントン・バトラーがモデルになっているのだ。
これまでの多くのラッセル監督作品のように、本作もどこかはみ出し者のようなアウトサイダーたちの物語。そして、スリリングな展開になりつつも常に誰かが真面目な顔で地味なジョークをかます。独特のユーモアとコメディセンスがずっとそこにありながら、本作はとにかく早いテンポで事件が展開していくので観客を飽きさせない。そのストーリーテリングの秀逸さはもちろんのこと、本作の最大の魅力はキャラクターそのものと、演じる豪華キャスト陣のパフォーマンスだ。
先述のメインキャスト陣のほか、クリス・ロック、ラミ・マレック、アニャ・テイラー=ジョイ、ゾーイ・サルダナ、マイケル・シャノン、マイク・マイヤーズらが出演している。まるで天体観測をしているみたいに、まばゆいメンツばかりで目が眩んでしまう。