『舞いあがれ!』飛行機というモチーフの素晴らしさ まだまだ観たかった子役時代に寄せて

『舞いあがれ!』のモチーフの素晴らしさ

 “朝ドラ”ことNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』の第3週「がんばれ! お父ちゃん」で子役のターンが終了した。第3週のおわり、第15話で、舞(浅田芭路)が父・浩太(高橋克典)に連れられて飛行機が飛ぶ姿を間近で見上げた空から街を俯瞰すると、そこは2004年の東大阪――。18歳、大学生になった舞・福原遥が登場した。

 朝ドラでは毎度、子役週がもう少し長く続けばいいのにと名残り惜しくなる。少し前までは、朝ドラにしろ大河にしろ、子役時代はプロローグに過ぎず、早く本題に入ってほしくて物足りなく感じる視聴者がいるため、短くすることが心がけられていたように認識していた。つまり、「今度のドラマはこの人が主演!」と大々的に打ち出して、その俳優の魅力を牽引力にしているので、その人が出ないと興味が失せてしまうからで、大河はそのため子供時代も大人の俳優がやっている(例:『真田丸』の堺雅人、『鎌倉殿の13人』の小栗旬など)。

 ところが最近は、こと朝ドラに限って、子役時代の評判がいい。子役が大人顔まけのしっかりした演技をして、心をぐっと掴む。そのため、もっと子役時代を描いてほしいという声も出る。『舞いあがれ!』も然り。1、2週で交代していたのが今回は3週まで子役で、長いほうながらまだまだ観たかったと名残惜しく感じた。

 舞の幼少期を演じた浅田芭路は、熊野律時チーフプロデューサーが「辛さと明るさを行ったり来たりする表現を幼少期でやるのはかなり高度なことで、浅田さんは抜群にチャーミングな笑顔と悩む顔を両方できる方だと思ったのでお願いしました」と言うだけあってまさに、微妙な心理を巧みに演じていた。

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舞いあがれ!

 他人のことを気にしてくよくよ俯いていたのが五島列島に行ったあとは別人のように顔をあげて晴れやかで、大阪弁もちゃきちゃきになる。第14話、お好み焼き店で、父・浩太の仕事仲間の隣に座って「お父ちゃんがいつもお世話になってます」と言うときのしっかり者感。ここは彼女が主体となって、仕事仲間が浩太の仕事に協力せざるを得ないようにもっていくわけではなく、お好み焼き屋の夫婦(山口智充、くわばたりえ)が舞の健気さを強調して協力せざるを得なくするのだが、子供なのに手練という感じではなく、ただちょこんと座っているだけで、大人の心が動いてしまうという面白さになっている。

 浅田芭路は嫌味なくそこに佇んでいるだけだが、その前に、彼女が演じる舞が、父や母や祖母のことを懸命に考えて思いやって、身も心も稼働させてきたことを視聴者は観ている。そう、この3週間、舞は父と母と祖母を救いながら、自分も元気になって来た。ここが『舞いあがれ!』の最大の魅力である。

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