『舞いあがれ!』飛行機というモチーフの素晴らしさ まだまだ観たかった子役時代に寄せて

『舞いあがれ!』のモチーフの素晴らしさ

 原因不明の発熱を治すために来た五島列島で、祖母に助けてもらって心の悩みを解消すると同時に、祖母と母の確執を解消する。興味をもった飛行機づくりに熱中し自分の楽しみを満たしながら、仕事がうまくいかず元気のない父を励ます。他者が笑顔に、元気になることで自分の心のもやもやも晴れていく。

 相互扶助と口で言うのはたやすいが、ほんとうにお互いが助け合うというのは舞と家族や隣人たちのようなことなのだろう。その物語に「飛行機」というモチーフは実にふさわしい。ばらもん凧が、逆風を受けて飛ぶという、人生の格好のモチーフになっているのと同時に、飛行機は最大のモチーフである。たくさんの細かい部品が精密に組み立てられてそれらがすべて機能することで飛ぶことができる。つまり個々の部品がすべてその機能を発揮しているという相互扶助の賜物のような存在が飛行機なのである。ひとりひとりが自分らしくいられて、それぞれが自分のできる力を最大限に発揮することで大きな事が成し遂げられる。みんなが満足する。国家とは飛行機のようなものではないだろうか。

 舞たち子供の秘密基地となる古書店デラシネの店主・八木(又吉直樹)が第13話で、生きることを船で航海することに例えていた。船も飛行機と同じく小さな部品がみごとに組み立てられて動く。だが、八木は乗員でパーティーをしていると息苦しくなると語る。だからひとり海に潜るのだと言うのだ。彼のような心情に共感する人もいるだろう。八木みたいな人は飛行機の旅を選ぶべきだ。そういう話ではない。でも、そういう話だ。どういうことか。相互扶助で駆動している船と飛行機の違いといえば、飛行機は乗員がつるまないが、船では乗員がつるむことができるスペースがある。集まってわいわいやることが苦手な人もいるとすれば、飛行機や新幹線のように椅子で区切られてひとりの世界に入れるほうがいい。若干窮屈だが。余談だが筆者は飛行機や新幹線にひとりで乗って誰ともしゃべらない時間が思考をリセットできる時間になっている。

 ひとりひとりの人生は、飛行機のように、セパレートされ、それでも切り離すことはできず、居合わせた者たちと共に進むことではないだろうか。飛行機はとても哲学的な乗り物なのだ。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK

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