普通ではなく自分であれ ダークユーモアで『アダムス・ファミリー』が肯定し、描くもの

『アダムス・ファミリー』が肯定するもの

 さて、本作を語る上で欠かせない存在と言えば、ハンドくん。2022年に本作を鑑賞し直してみると、その映像技術の凄まじさに圧倒される。本作がデビュー作となり、のちに『メン・イン・ブラック』を手掛けたバリー・ソネンフェルド監督は、当時の最新CG技術や早回しを駆使し、視覚的にも楽しめる作品として本作を完成させた。制作費も3000万ドルと、ホラーコメディ映画にしては巨額のバジェットを注ぎ込まれている。しかし、そのおかげで非現実的な家族を現実的に描くことに成功し、フィクションとノンフィクションの合間を行き来するような不思議な味を出すことができた。

 剣術も巧みで、地味にこの一本の映画の中でホラー、コメディ、アクション、ミュージカル、サスペンスとあらゆるジャンルのことをやっているのがすごいのだ。ゴメズが怒って蒸気機関車を走らせるシーンも、素早くカットが切り替わることでおもちゃなのに緊張感と迫力が高まる。それに加え、実は中に人が乗っているといったような「!?」な演出の連続に思わず笑ってしまう。そんなセンスの塊のようなシーンがいくつも登場するのが、『アダムス・ファミリー』が今観ても廃れていない作品と言える要因だろう。

 ちなみに、本作の魅力として先述したジョークの数々は、吹替版になるとさらに豊かなものになる。ソフト版ではシュワちゃんの声でお馴染みの玄田哲章が、日本テレビ版ではモーガン・フリーマンでお馴染みの池田勝がゴメズを吹き替えるなど、声優が担当しているキャラに変更があるものの、どちらも最高なので、一度は必ず日本語吹替版で観てほしい。『サボテン・ブラザーズ』を彷彿とさせる、英ジョークの秀逸な日本語訳の数々が癖になって、友達と観ても家族と観ても楽しめるようになっている。ダークで皮肉たっぷりなセリフを通して、アダムス一家のことがもっと好きになるはず。

■放送情報
『アダムス・ファミリー』
日本テレビ系にて、9月30日(金)21:00〜22:54放送
監督:バリー・ソネンフェルド
出演:アンジェリカ・ヒューストン、ラウル・ジュリア、クリストファー・ロイド、エリザベス・ウィルソン、ダン・ヘダヤ
TM & Copyright © 2022 by Paramount Pictures. All rights reserved.

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