千束とたきなが最高に魅力的な『リコリス・リコイル』 大ヒット作となった要因を考える

 安済知佳はこれまでの出演作で『響け!ユーフォニアム』、『灰と幻想のグリムガル』、『サクラクエスト』と、クールな黒髪系のキャラを数々演じているのだが、『リコリス・リコイル』ではその系統のたきなではなく、千束を演じているところが面白い。10年以上の芸歴で芝居の引き出しが多い分、千束の明るさの中に時折見せる苦悩のような繊細な表情の出し方が上手い。本作の第4話で、男物のトランクスを履いているたきなのために、可愛い女性用下着を買いに行く楽しいエピソードも、第12話で吉松が自分を生かした真意を知った時の低いトーンの芝居も、どちらも安済の芝居の上手さで画面が引き立っている。

 若山詩音は劇場用アニメ『空の青さを知る人よ』の主演で注目された声優で、比較的近年から活動を始めた方だが、『SSSS.DYNAZENON』、『takt op.Destiny』と、感情を顔に出さないクールなメインヒロインを立て続けに演じ、『ハコヅメ〜交番女子の逆襲〜』では、ドジな新人警察官のコミカルな演技で今までのイメージを覆した。本作で演じているたきなは、職務に忠実で真面目な性格から、千束に感化されて変わって行く成長ぶりが観ていて微笑ましい。特に第4話のラストシーンで、スカートをめくられている千束を見ながら声をあげて笑う姿や、第6話で千束にジャンケンで勝った時に「っしゃっしゃっしゃっ」と文字で表わせないような歓喜の声をあげる若山の芝居も、それまでの生真面目派なたきなの演技との対比でファンの頬を緩ませた。余談だが若山は『SSSS.DYNAZENON』のレギュラー出演で安済と共演歴がある。

 女性キャラのバディものというジャンルは決して目新しくないが、千束とたきなのキャラ立ての巧みさと、それを支える両声優の熱演、これこそが作画、演出、ガンアクションと並んで『リコリス・リコイル』を大ヒット作に盛り上げた要因だろう。白熱の最終回の行方を見守ろう。

■放送情報
『リコリス・リコイル』
TOKYO MXほかにて放送中
キャスト:安済知佳、若山詩音、小清水亜美、久野美咲、さかき孝輔
原作:Spider Lily
監督:足立慎吾
ストーリー原案:アサウラ
キャラクターデザイン:いみぎむる
副監督:丸山裕介
サブキャラクターデザイン:山本由美子
総作画監督:山本由美子、鈴木豪、竹内由香里、晶貴孝二
メインアニメーター:沢田犬二
プロップデザイン:朱原デーナ
美術監督:岡本穂高、池田真依子
美術設定:六七質
色彩設計:佐々木梓
CGディレクター:森岡俊宇
撮影監督:青嶋俊明
編集:須藤瞳
音響監督:吉田光平
音楽:睦月周平
制作:A-1 Pictures
©Spider Lily/アニプレックス・ABC アニメーション・BS11
公式サイト:https://lycoris-recoil.com/
公式Twitter:@lycoris_recoil

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる