『リコリス・リコイル』人気上昇中 ヒットの理由は足立慎吾監督ら盤石のスタッフ陣にあり
春夏秋冬とシーズン毎に3カ月単位でテレビアニメが大幅に入れ替わる昨今、2022年夏も多くのアニメが放送(&配信)中だ。発行部数の多いライトノベルや人気漫画の原作付きもあれば、完全オリジナル作品のものもある。毎シーズン、それら多くのアニメが視聴者を獲得するべく競い合っているわけだが、話題性も注目度も他作品から頭ひとつ、ふたつも抜けているのが『リコリス・リコイル』である。
美少女がバンバン銃を発砲するガンアクション物で、過去に同ジャンルの作品は多々あったが、これほどまで大人気に至ったのは珍しい。有名原作のアニメ化という前評判もなく、むしろ競合作の多い中でオリジナルアニメを当てるのが難しい昨今に、プロアマのファンを巻き込み凄まじい人気作となっているが、何がそこまで多くの人を惹きつけているのだろうか。
犯罪者を始末し、日本の治安を影で守っている秘密組織・Direct Attack、通称DA(ディー・エー)。そのDAから殺人の許可を与えられた実働部隊リコリスのメンバーである井ノ上たきなは、ある任務中に命令を無視した発砲が原因でチームから外された。たきなの配置転属先はDA支部の和風喫茶リコリコで、そこで看板娘として働く優秀なリコリスの錦木千束(にしきぎ・ちさと)とコンビを組むことになる。陽気でマイペースな千束と、合理主義者でクールなたきなの活躍はいかに……というのが本作の大筋。ハリウッド映画に多く見られる、性格の違う凸凹コンビの“バディ(相棒)アクション”のスタイルを下敷きに、幾多のトラブルを乗り越えながら、互いの距離感を縮めてゆく千束とたきなの人物像が見どころとなっている。オープニングのタイトルバックラストで、互いの尻にキックを入れ合うリアクションで、2人の良い関係性が伺える点もファンの注目を集めている。
本作の魅力として、スタッフの人選にユニークさが光っていることが挙げられる。まずキャラクターデザインは漫画家のいみぎむるが担当している。漫画家がアニメ作品のキャラクター作りに参加することは珍しくないが、ほとんどはキャラクター原案どまりで、アニメ用の設定清書は本職のアニメーターが担うことが大半だ。いみぎむるは2016年に自身の原作『この美術部には問題がある!』がアニメ化されているが、この時のキャラクターデザインは原作者ではない。それだけに彼が原作漫画を描いているわけではない『リコリス・リコイル』は大抜擢と言えるだろう。
また、犯罪者の射殺も臆さずのリコリスは、街中で警戒されないよう学生服のような制服を着用しているが、この制服デザイン原案に、日向坂46や乃木坂46の衣装デザインを手がけてきた尾内貴美香を起用している。古くさかのぼれば、『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』にファッションデザイナーの花井幸子がパブリシティの側面から参加したことはあるが、服飾系畑の人がアニメの衣装デザインに起用されるのは稀である。