女性W主人公の時代到来? 『リコリス・リコイル』と『シャドーハウス』の共通点

 そして2作の主人公たちはお互いの考えを理解していき、以心伝心で通じ合うまでに絆が深まっていく。

 『リコリス・リコイル』11話で千束が真島というテロリストに追い詰められていた際、スマホに3コールワン切りで着信が入る。これはたきなの「危険と判断。すぐに向かう」というメッセージだ(第8話参照)。千束はそれを瞬時に察し、数発発砲し自分の位置を伝える。そこにたきながシャッターを突き破り、千束を助けにきた。このシーンは放送後、大きな話題となっている。

 『シャドーハウス』ではケイトが敵から逃げていた際に、途中にあった川の近くにパン(エミリコが持たせたもの)を置いてエミリコにメッセージを伝えたことがあった。エミリコはケイトの性格から、考えを正確に予測。先回りし作戦を実行したことにより見事ケイトを助け、敵を撃退している。

 さらに2作はストーリーだけでなく、百合要素でも話題になっている作品だ。『リコリス・リコイル』では千束がたきなを抱え上げて回りながら「私は君に会えて嬉しい! 嬉しい、嬉しい!!」と笑顔で語りかけるシーンなど、多くの百合要素が盛り込まれている。Twitterで『リコリス・リコイル』関連のツイートは非常に多いが、百合関連のイラストや創作漫画が多数である。『シャドーハウス』でも百合要素があり、特に11話ラストでの展開はTwitterで「百合心中」と呼ばれ話題を集めた。

 またこの2作で重要なのが、千束とエミリコの存在である。『リコリス・リコイル』は日常を描いたシーンやギャグ要素も多いが、命について扱っていることもありストーリーはやや重い。『シャドーハウス』はダークファンタジーに分類される作品で、本来決して明るい内容のアニメではない。しかし千束とエミリコの明るさのおかげで、ストーリーがシリアスになりすぎず絶妙なバランスを保っているのだ。

 このように『リコリス・リコイル』と『シャドーハウス』は世界観が異なるものの、実はよく似た構造で成り立っている。そしてこの2作がどちらも世界的に評価されたということは、女性W主人公の時代到来を感じさせる。

 W主人公の作品はそう多くないが、女性となるとさらに限られる。しかし今後は『リコリス・リコイル』『シャドーハウス』のように、女性W主人公の作品が増えていくのではないだろうか。

参考

※ https://anitrendz.com/

■放送情報
『リコリス・リコイル』
TOKYO MX:毎週土曜23:30〜
とちぎテレビ:毎週土曜23:30〜
群馬テレビ:毎週土曜23:30〜
BS11:毎週土曜23:30〜
ABCテレビ:毎週水曜26:14〜
メ〜テレ:毎週木曜26:15〜
AT-X:毎週月曜22:00〜
ABEMA:毎週土曜23:30〜
原作:SpiderLily
監督:足立慎吾
出演:安済知佳、若山詩音、小清水亜美、久野美咲、さかき孝輔、河瀬茉希、小市眞琴、松岡禎丞、榊原優希、上田燿司
ストーリー原案:アサウラ
キャラクターデザイン:いみぎむる
副監督:丸山裕介
サブキャラクターデザイン:山本由美子
総作画監督:山本由美子、鈴木豪、竹内由香里、晶貴孝二
銃器・アクション監修:沢田犬二
プロップデザイン:朱原デーナ
美術監督:岡本穂高、池田真依子
美術設定:六七質
色彩設計:佐々木梓
CGディレクター:森岡俊宇
撮影監督:青嶋俊明
編集:須藤瞳
音響監督:吉田光平
音楽:睦月周平
制作:A-1Pictures
©SpiderLily/アニプレックス・ABCアニメーション・BS11
公式サイト:https://lycoris-recoil.com/
公式 Twitter:https://twitter.com/lycoris_recoil

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アニメシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる