『オールドルーキー』が掲げたすべての人へのリスペクト 反町隆史が陰の立役者に

『オールドルーキー』反町隆史が陰の立役者に

 『オールドルーキー』(TBS系)最終話が9月4日に放送された。高柳(反町隆史)にクビを宣告された新町(綾野剛)は、スポーツマネジメントの仕事に携わらないことを約束してビクトリーを去る。サッカーJ1・FC東京に所属し、海外移籍を目指すフォワードの伊垣(神尾楓珠)は、新たに代理人となった光岡(勝村政信)に満足できず、ビクトリーとの契約を打ち切る。塔子(芳根京子)と城(中川大志)も新町を追うようにして退社し、一枚岩だったビクトリーに亀裂が入る。

 スポーツとビジネスの矛盾、あるいは緊張関係という今作のテーマは、比較的早い段階で現れており、それをどう描くかが焦点だった。まず、元選手でアスリート寄りの考えを持つ新町と、利益追求のために冷徹な判断もいとわない高柳の対比が挙げられる。創業時に「すべてのアスリートにリスペクトを」という理念を掲げたのは高柳だが、ある出来事がきっかけで考えを改めた。同じペルソナの両面を示す2人がどのように和解するかに注目が集まった。

 『オールドルーキー』は組織改革の物語として理解することもできる。新町と高柳のスタンスの違いは回を追うごとに鮮明になり、高柳が新町をビクトリーから排除するところまで行ってしまう。しかし、その頃には、アスリートファーストを追求する新町の取り組みは浸透し、確実にビクトリーを変えつつあった。ある意味もっともビクトリーらしい社員である新町が、会社に新風を吹き込んだ。遅れてきた新人であるオールドルーキーは、マンネリ化した組織に原点回帰を促す役割を担っていた。

 『オールドルーキー』は純然たるスポーツドラマではないが、現役また引退したプロアスリートが多く出演しており、競技シーンのクオリティは高かった。日曜劇場はスポーツと相性が良く、池井戸潤原作による2014年4月期の『ルーズヴェルト・ゲーム』(TBS系)、2017年10月期の『陸王』(TBS系)、2019年7月期の『ノーサイド・ゲーム』(TBS系)があり、白熱した競技シーンが話題になった。企業スポーツとプロスポーツの違いはあるが、ビジネスとスポーツをめぐって、同枠の視聴層の関心に応えたのが一連の作品といえるだろう。業界の実状を反映したお仕事ドラマという点で、同クールの『ユニコーンに乗って』(TBS系)や『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』(TBS系)に通じる面もあり、また、新町の妻・果奈子(榮倉奈々)や第8話で移籍に悩むバレーボール選手を通じて、女性のセカンドキャリアへの問題提起も見られた。

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