『プリズム』7年の時を経て明らかになった悠磨の思い 相手に自分を開示することの必要性

『プリズム』7年前の悠磨の本音が明らかに

 藤原季節いわく“最終章の始まり”となった『プリズム』(NHK総合)第7話。その言葉通り、皐月(杉咲花)と陸(藤原季節)の関係性が、7年の時を経て明らかになった悠磨(森山未來)の想いにより大きく揺らいでいく。

 会社を守るために、結婚するふりを続けてきた皐月と陸。しかし、朔治(矢島健一)をずっと騙し通せるはずはなく、二人の偽装結婚はついに両家顔合わせの段階にまで発展した。その場で朔治は幾度となく“普通”という言葉を口にする。

 男女が結婚し、子どもを持つこと。結婚したら女性が男性の身の回りの世話をすること。それらすべてを普通だと語る朔治に、皐月は「もっといろんな違う形もあるってことが普通なのではないか」と反論する。

 自分とは価値観が違うのだと割り切って、聞き流すこともできたはず。だが、皐月はそうしなかった。彼の無意識のうちに発せられる言葉の暴力から、陸や自分のために顔合わせに出席してくれた耕太郎(吉田栄作)を守るためだろうと思う。その表情には、何にも本気になれなかった、かつての皐月からは考えられないほど強い覚悟が滲んでいた。

 本作はさまざまな愛の形を肯定しながらも、それが時に歪みを生じかねないものであることを教えてくれる。例えば、剛(寛一郎)や梨沙子(若村麻由美)の皐月に対する愛。彼らの愛は、世間一般に言われる幸せを皐月に手に入れさせることだった。朔治の陸に対するそれも同じ。茨の道に進もうとする息子を守ろうとした朔治の愛は、結果的に彼から幸せを奪ってしまった。

 そんな父親と縁を切ろうとする陸に待ったをかけるのが、耕太郎だ。朔治が陸に普通を押し付けてくるのは、「怖いからじゃないかな」と耕太郎は言う。知らないから怖いという気持ちは本来誰しも持っているもの。知ろうとするのも勇気がいる。だからこそ、ただ理解を求めるのではなく、相手に自分を開示することの必要性を説く耕太郎。その言葉に心動かされた陸は今一度、朔治と向き合う。

「真っ先にあなたに伝えたかった。自分より大切だと思える人に出会えたんです。でも話せなかった。あなたが悲しむと思うと」

 自分の知らないものと対峙するのは怖いが、むき出しの自分を誰かに見せるのも怖い。それが大切な誰かならなおさらだ。否定されたら? 気味悪がられたら? 相手を悲しませてしまったら? 考えるだけで足がすくむ。

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