『オールドルーキー』綾野剛と渡辺翔太の鼓動が響き合う 新町は高柳を変えられるのか?
アスリートが立つ栄光の舞台。勝利の瞬間、注目を一身に集め、割れんばかりの喝さいを浴びる。しかし、ひとたびその座を追われると状況は一変する。誰一人見向きもせず、昨日まで称賛していた人々が手の平を返して、罵声を浴びせかける。『オールドルーキー』(TBS系)第9話は、アスリートが味わう明暗のコントラストを強く感じさせた。
パリオリンピックを目指す水泳選手の麻生健次郎(渡辺翔太)が、ドーピング検査で陽性になる。禁止薬物のスタノゾロールが検出され、結果は4年間の資格停止処分。麻生は大会に出場できない上、4年後に29歳、次のオリンピックは31歳で選手としてのピークが過ぎてしまう。アスリート生命を奪うに等しい処分に、「もう水泳はできない」と麻生は打ちひしがれる。
影が身に沿うように、アスリートとマネジメントは一心同体だ。ただし、それはあくまで理想論で、困難に直面すれば両者の関係はたちまち崩れ去る。一方には競技へのあくなき向上心、もう一方にビジネスがあり、両者の利害は一致しないからだ。反対に、アスリートとマネジメントが一蓮托生ならどうなるだろう。困難に直面してなお運命共同体であることを選べば、周囲との軋轢は避けられない。文字通り世界を敵に回す覚悟が問われる。
マネジメントを担当する新町(綾野剛)は、麻生のために処分が軽くなる方法を探る。「麻生くんはパリオリンピックに人生のすべてを賭けてた。そんな彼がリスクを冒して薬に頼るはずがありません」と新町は訴える。親子2代で金メダルを目指す麻生の思いを、誰よりも新町は理解していた。だが、社長の高柳(反町隆史)は非情にも麻生との契約を解消。新町は、高柳に黙って独自調査を始める。
新町は、麻生が摂った食事やサプリメントの記録を徹底して洗い出す。ついこの間まで指1本でキーボードを叩いていた新町が、見違えるようにデスクワークをこなし、持ち前のフットワークを生かして出張先へ向かう。誰かを守るため、出したことのない力を出す新町は別人のようだった。現役時代とは違い、自分を強く見せるのではなく、相手に寄り添うという別の強さを新町は身に着けていた。
スーツにスニーカーを履いた元サッカー選手は、スポーツビジネスに染まりきれなかったのか。ドーピング問題に詳しい弁護士の風間(山村紅葉)と、塔子(芳根京子)や城(中川大志)、梅屋敷(増田貴久)らの協力のもと、新町はドーピングの原因がサプリメント汚染にあり、麻生に非がないことを証明する。しかし、独断で会見を開いたことが高柳の逆鱗に触れ、クビを宣告されてしまう。