『ちむどんどん』井之脇海が体現した矢作の“改心” あふれでた涙に込められた新たな一歩

『ちむどんどん』矢作らしさに溢れた100話

 『ちむどんどん』(NHK総合)第20週「青いパパイアを探しに」第100話という記念すべき回で、矢作(井之脇海)が料理人として復帰を果たす。

 暢子(黒島結菜)が働く「アッラ・フォンターナ」を逃げるようにして辞め、自身で経営する店がうまくいかず借金を抱えた末に、フォンターナの権利書まで盗んで行った矢作。そんな彼を暢子は自身が開業する沖縄料理店「ちむどんどん」にスカウトする。房子(原田美枝子)が出した条件の一つ「店の味を任せられる料理人を雇うこと」には当てはまるものの、人としての信頼性は皆無だった。

 それでも暢子は矢作を信じ、彼にとっての古巣・フォンターナに連れて行く。「謝る気はありませんから」とどこまでも強情な矢作を、房子は温かく迎え入れる。準備していたのは渡せなかったいつかの退職金。自分も店を出し、何度も失敗してきたからこそ、独立する時には相談してほしかった、なにより矢作には妻の佳代(藤間爽子)という大切な存在がいる。いくらでもやり直せる、と房子は暢子と同じく矢作が改心することを信じていた。

『ちむどんどん』

 フォンターナの奥から佳代が姿を現す。夫がもう一度再起できないか、房子が相談に乗っていたのであろう。妻の涙ながらの「もう一度料理人になってください」という言葉、自分のことを見捨てずにいてくれた房子の優しさに、矢作はもう一度料理人としてやり直すことを誓う。

 暢子が料理人としての矢作を信じ続けたのは、かつて暢子がフォンターナで初めて沖縄そばを賄いで作った時に、いの一番で「うめぇ!」と言ってくれたから。憎まれ口を叩く矢作だが、どこまでも真っ直ぐでピュアな一面も持ち合わせている。包丁は料理人にとっての命のようなもの。何軒も飲食店を周り門前払いされながらも、包丁だけは肌身離さず持っていた矢作を、房子や二ツ橋(髙嶋政伸)も「料理人としての自分を諦めていない」と認めるのだった。房子はフォンターナを後にする矢作に「長い間、ご苦労様でした」と感謝を告げる。やっと言うことができる数年越しの門出の言葉だ。

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