『ちむどんどん』矢作は井之脇海だから成り立つ 凋落する役の説得力は『石子と羽男』でも
矢作を演じる井之脇は、最近では金曜ドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』(TBS系)第3話で、映画を短く編集した「ファスト映画」を動画サイトに次々アップして映画会社から著作権違法で訴えられた大学生・山田遼平を演じていた。
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「何がいけないんですか? 本当わかんないんです。権利持ってないヤツが作っても、結果的に映画の宣伝になってたらいいじゃないですか!…
自分が編集した「ファスト映画」をアップロードすることで作品に興味を持ち、反応してくれる人がいるのだから、むしろ映画業界に貢献していると反省の色なく開き直る態度を見せたかと思えば、キラキラとした瞳で純粋に映画愛を語るなど、悪気ないまま告訴、逮捕されてしまう未熟さが逆に事件の重みを感じさせた。好きなことに夢中になるあまり視野が狭くなり、善悪の区別もつかなくなってしまっていた。
自分の才能を過信していた遼平が心から後悔したからといって、罪が簡単に許されるわけではない。最初はヘラヘラとしていたのに、事の重大さに気づくにつれ重苦しい表情へと変わっていく井之脇の好演があってこそ、「ファスト映画」問題を視聴者に強く訴えかけることができた。
好きなことに夢中になるあまり視野が狭くなり、善悪の区別もつかなくなってしまったのは、『ちむどんどん』の矢作にも言えることだ。
矢作はひねくれた言動で暢子にとっては煙たいイヤな先輩であり、職場の仲間にも迷惑をかけたが、このまま物語から消えるわけがない……。そう思えたのは井之脇の確かな演技があったからこそ。
井之脇といえば、比嘉家の四女・歌子役の上白石萌歌と共演したドラマ『義母と娘のブルース』シリーズ(TBS系)で幼なじみのみゆき(上白石萌歌)を支える黒田大樹役など、好青年の役をこれまで多く演じてきた。
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「私、自分で子どもを産まなくて良かったです。あなたみたいないい子は、絶対に私からは産まれてきません」 このドラマ以外で書かれ…
しかし、無精髭で身をやつした姿で再登場した矢作は「アッラ・フォンターナ」で働いていたころと比べても、井之脇が演じてきた他の役と比べても、異質な容貌になっている。一体、彼に何があったのか。そして井之脇は、そんな矢作をどのように演じて見せるのだろうか。
参照
※1. https://www.nhk.or.jp/chimudondon/cast/yahagi.html
■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK