『初恋の悪魔』YUIの「CHE.R.RY」で共有された奇跡 鹿浜にとって星砂はマイナスの悪魔?

鹿浜にとって星砂はマイナスの悪魔?

  坂元裕二脚本のドラマは、物語中盤で意外な場所へ向かうことが多いが、この『初恋の悪魔』(日本テレビ系)も第5話で大転換をみせた。

 本作は4人の警察関係者が事件について考察する姿を描いた異色の刑事ドラマなのだが、今回は今までのパターンから大きく外れ、自宅捜査会議も「マーヤーのヴェールを剥ぎ取るんだ」という決め台詞も登場しなかった。その変わりに描かれたのが、停職処分中の刑事・鹿浜鈴之介(林遣都)の過去と、孤独だった彼の心が救われる姿だ。

 謎の隣人・森園真澄(安田顕)と共に自宅の地下に監禁部屋があることを発見した鹿浜だったが、森園によって監禁部屋に閉じ込められてしまう。元弁護士で現在は小説家の森園は、5年前に起きた中学生殺人事件の犯人を探していた。中学生が残した言葉を手がかりに「地下室のある家」を探していた森園は、鹿浜の暮らす洋館が怪しいと睨み、鹿浜の動向を監視していたのだ。

 鹿浜から自供を引き出そうとする森園。しかし鹿浜と揉み合っているうちに部屋の鍵がロックされてしまい、2人とも監禁部屋に閉じ込められてしまう。その後、鹿浜と森園は、自宅捜査会議の仲間である馬淵悠日(仲野太賀)、小鳥琉夏(柄本佑)、摘木星砂(松岡茉優)の3人に救出されるのだが、その過程でわかるのが洋館の持ち主だった老女・椿静枝(山口果林)のことだ。

 街で困っていた椿に鹿浜が声をかけたことをきっかけに、2人は時々、洋館で会うようになる。「冷血な変人」だと自嘲する鹿浜に対して、椿は「世の中を恨む悪魔になっちゃダメ」と言ってくれた。幼少期から孤独だった鹿浜にとって椿はいっしょにいると「優しい気持ちになれる」相手で、「僕はこの世界にいてもいい」という喜びを教えてくれた人だった。しかしある日突然、彼女は命を落としてしまう。

 その後、鹿浜は、この洋館を譲り受けるのだが、実は彼女は犯罪者で、中学の外壁崩壊事故に巻き込まれて亡くなった娘と孫の復讐のために、管理を怠った市役所職員を監禁部屋に閉じ込めた過去があった。椿は監禁罪で逮捕。情状酌量となり執行は免れたものの、彼女の復讐心は収まらず、事故に関わった「誰か」を再び監禁しようと目論んでいた。そんな時に彼女は偶然、鹿浜と出会った。

 日記に書かれていた椿の姿はもう1人の鹿浜だった。「世の中を恨む悪魔になっちゃダメ」という言葉は、自分自身に向けられた言葉でもあり、鹿浜を心配することで復讐心から開放され、彼女は救われたのだ。

 これまでのエピソードと比べると異色回に思える第5話だが、娘と孫の復讐心に囚われた犯罪者の椿と孤独な鹿浜の内面がシンクロしているという意味では、これまでの事件と同じ描かれ方だったとも言える。

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