『オーファン・ブラック』から『シー・ハルク』へ タチアナ・マズラニーの変幻自在な魅力

タチアナ・マズラニーの変幻自在な魅力

ドイツ語での演技、複雑な内面を持つカリスマ宗教指導者役も

 しかし彼女の挑戦はそれだけでは終わらない。2017年の『黄金のアデーレ 名画の帰還』では、ヘレン・ミレン扮するユダヤ人女性マリア・アルトマンの若き日を演じ、ドイツ語での演技を披露している。彼女にはドイツ語を話す祖父母がおり、母親からは英語よりも先にドイツ語を教えられていたという。同作で彼女が演じた若き日のマリアは、ナチスが台頭してきた時代のオーストリアで暮らしている。よくある第二次大戦もののように、舞台がどの国かに関わらず全員英語で話すよりもリアリティのある作りになっている同作で、マズラニーは多くのドイツ人俳優と肩を並べ、その存在感を示した。

 2020年にロバート・ダウニー・Jr.がプロデューサーを務め、往年の名作をリメイクしたドラマ『ペリー・メイスン』では、マズラニーは新興宗教のカリスマ指導者シスター・アリスを演じた。1930年代に実在した福音伝道師エイミー・センプル・マクファーソンをモデルにした彼女は、力強く巧みな演説で人々を扇動する。ときに常軌を逸した言動で信者たちの心を惹きつけながら、乳児殺害事件の捜査に関与していく。マズラニーが演じたシスター・アリスは強い求心力を持つ一方で、母親との関係に問題を抱える複雑な人物だ。意外な結末を迎える同作で、彼女の存在は異彩を放っている。

本格的なアクション、モーションキャプチャという新たな挑戦

 多くの挑戦をしてきたマズラニーだが、『シー・ハルク』はこれまで本格的なアクション作品への出演がなかった彼女にとって、新たな挑戦となっている。さらにモーションキャプチャを使った演技も初めてだ。米ABCの情報番組Good Morning Americaで語ったところによると、2メートルを超える身長のシー・ハルクを演じるにあたって、彼女は台の上に立ち、さらにモーションキャプチャスーツのヘルメットの上に顔となる部分を取り付け、ほかの俳優たちはそれを見上げるかたちで演技をしたという。これはマーク・ラファロがハルクを演じるときと同じ方法で、これまでとは違った経験を彼女は楽しんだようだ。

 『オーファン・ブラック 暴走遺伝子』で確かな演技力を見せ、さまざまな役柄に挑戦してきたタチアナ・マズラニー。そんな彼女は、『シー・ハルク』でこれまでとは一味違うヒーロー像を見せてくれるに違いない。フェーズ4に突入したMCUには、次々と新たなヒーローが登場している。その個性的な面々のなかでも、魅力的な存在になるだろう。また、マズラニーは2023年にもドラマ『Invitation to a Bonfire(原題)』への出演が決定している。アメコミヒーロー役で活躍しながら、そのイメージに縛られない幅広い活躍を今後も期待したい。

参考

https://www.cbr.com/she-hulk-tatiana-maslany-frozen-face-motion-capture/

■配信情報
『シー・ハルク:ザ・アトーニー』
ディズニープラスにて、8月18日(木)16:00より独占配信開始
©︎2022 Marvel
公式サイト:https://disneyplus.disney.co.jp/program/She-Hulk.html

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