ドラマ・映画で市民権を得る「元カレ」「元カノ」 “エモさ”を与える要素も?

市民権を得る「元カレ」「元カノ」

 同じく伊藤沙莉が出演した映画『ちょっと思い出しただけ』(2022年2月公開)は、かつて恋人だった照明スタッフの佐伯照生(池松壮亮)と、タクシードライバーの野原葉(伊藤沙莉)の物語。あることをきっかけに、ともに過ごした過去を振り返るのだが、2人は復縁したいわけじゃない。ただ、“ちょっと思い出しただけ”なのだ。

 恋愛には「上書き保存」タイプと「名前をつけて保存」タイプがいる、というのは有名な話。終わった恋を忘れて(上書きして)次に進む人もいれば、どこかで復縁を期待したり、元恋人との思い出をフォルダ保存して、たまに開く人がいたりするらしい。

 たとえ上書きタイプの人でも、恋人と共に過ごした思い出に触れれば、いやが応でも当時の気持ちがよみがえるだろう。佐藤や佐伯、野原が、恋人との思い出を追想したのも些細な出会いがきっかけだった。『ボクたちはみんな大人になれなかった』も『ちょっと思い出しただけ』も、そんな誰もが感じる“一瞬”を切り取った名作たちなのだ。

 この2作品を観ていると、フィクションのはずなのに、自分の思い出と重ね合わせてエモくなる瞬間が多々あった。元恋人が出てくる物語は、観る人に自分の人生を振り返ってもらい、今、自分がどんな気持ちなのか、感情を整理させるきっかけを与える作用があるのかもしれない。

 もちろん恋愛はいい思い出だけを生み出すものではない。ただ、多くの出会いがあって今の自分がいる。その相手が深い関係になった恋人ならなおさらだ。終わった恋に対して、いつまでも未練がましいのはよくないが、元カレ・元カノに関する作品を観て、数分・数秒だけでも当時にタイムスリップするのも、たまにはいいかも……。

■配信情報
『ちょっと思い出しただけ』
AmazonPrime Videoにて配信中
(c)2022『ちょっと思い出しただけ』製作委員会

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