ドラマ・映画で市民権を得る「元カレ」「元カノ」 “エモさ”を与える要素も?
恋愛を描く映画やドラマにおいて、元カレ・元カノが重要な役を担うことがある。友人でもない、家族でもない、特別な存在である恋人は、1人の人生に大きな影響を及ぼすこともあるため、起用されることが多いのだろう。
たとえば、百貨店の地下食品売り場で働く柏葉東次(KinKi Kids・堂本剛)が、今カノでエレベーターガールの菜央(内山理名)と、広告代理店で働く元カノ・真琴(広末涼子)との間で揺れ動く『元カレ』(2003年/TBS系)、週刊誌記者の真壁ケイト(吉高由里子)が、海外出張から帰ってきた元カレで既婚者の尾高由一郎(柄本佑)と共に自分のルーツを探っていった『知らなくていいコト』(2020年/日本テレビ系)、さらには、法律事務所で働く剣持麗子(綾瀬はるか)の元カレ・森川栄治(生田斗真)が亡くなったところからはじまる『元彼の遺言状』(2022年/フジテレビ系)など、元恋人が主軸となるドラマは多々ある。
今年公開された映画でも、女子大生の史織(萩原みのり)が、卒業制作に撮影するホラー映画のロケハンに向かう元カレ・啓太(倉悠貴)に同行する『N号棟』(2022年4月公開)、主人公のボス(トー・タナポップ)が、余命宣告を受けた友人・ウード(アイス・ナッタラット)から元カノたちを訪ねる旅の運転手を任せられるタイ映画『プアン/友だちと呼ばせて』(2022年8月公開)と、挙げればキリがない。
元カレ・元カノが物語に登場すると、主人公たちの知られざる過去や成長したところ、変わらないところが浮き彫りになるのは明白。それだけに、元恋人という存在は、話に深みを持たせる“重要なコマ”として重宝されるのだろう。
そしてもう1つ。“エモさ”もキーワードになるのではないだろうか。近年、恋人との思い出を振り返る映画が立て続けに公開された。
2021年11月にNetflixと劇場で公開された映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』は、2020年、46歳になった佐藤誠(森山未來)が、ほろ苦い再会をきっかけに、“普通”が嫌いだった元カノ・加藤かおり(伊藤沙莉)と出会った1995年を思い出す……という物語。佐藤の人生を遡っていく展開と、90年代から現代までの匂いや空気が詰まった細かいディテールも相まって、誰もが通る・誰もが通った“あの頃”を思い出す作品となっている。