『愛の不時着』ヒョンビン×ソン・イェジンの隠れた初共演作『ザ・ネゴシエーション』
対するソン・イェジンもチェユン役を熱演。交渉人とは感情を隠し常に冷静なイメージだが、チェユンはその逆で感情が豊か。しかし国家組織の利益が優先され無実な人質が犠牲になろうとしている状況で、彼女が感情を爆発させることが唯一の救いでもある。今度こそ誰の命も失いたくないと後に引けないプレッシャーが熱意に変わっていく。犯人のテグに毅然とした態度で立ち向かいながら、彼女の内にある焦りや動揺、弱さや怒りを同時に伝える演技はさすがである。映画『ラブストーリー』(2003年)、『私の頭の中の消しゴム』(2004年)や、最近のドラマでは『39歳』(2022年)でも感情を揺さぶる表現力で物語への没入感を高めてくれた。
画面越しの動きが少ない交渉シーンがメインとなっていても、引き込みながら話を進め、緊迫感と臨場感を与えている。その理由は、二人の役者としてのポテンシャルの高さが、それぞれ難しい役柄の中に奥行きのある人間らしさを表現しているからだろう。
この人質事件には、犯人であるテグの意図が介在しているため納得感があり、シーンに無駄がなく最後まで集中できる。国家権力と個人の争いは既視感がありながらも、のしかかる重厚さと切実さが混在する。「ネゴシエーション」という題名だが、最終的には交渉人と犯人が同じ方向を見据える展開がまた興味深い。
同じ場所にいるシーンはほとんどないにもかかわらず、初共演とは思えない抜群のコンビネーションと多彩な魅力を発揮している本作は必見だ。
■配信情報
『ザ・ネゴシエーション』
Netflixで配信中
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