『リコリス・リコイル』人気上昇中 ヒットの理由は足立慎吾監督ら盤石のスタッフ陣にあり

 そしてそれらのスタッフをまとめる監督の足立慎吾は、大ヒット作『ソードアート・オンライン(通称SAO)』シリーズ(2012年~2019年)でキャラクターデザインと総作画監督を担当していた人物。もともと作画専門の仕事をしてきた足立は『リコリス・リコイル』が初監督作となるが、キャラクターたちのエモーショナルな動きと心情をアニメーター経験の視点から見事に設計している。

 その『SAO』でアクション作画監督を務めていた鹿間貴裕が、千束&たきなの銃撃戦が冴えわたる第5話、第6話の脚本・絵コンテを、同じく『SAO II』でアクション作画監督を務めた竹内哲也が第4話の絵コンテ・演出・作画監督を担当しているのにも要注目だ。

 『リコリス・リコイル』は基本的に1話完結で進んでいるが、千束が自分にフクロウの形のチャームをくれた人物を探していたり、邪魔なリコリスを次々と始末しているテロリストの男・真島の暗躍など、プロット自体は話数を重ねるごとに少しずつ進行している。孤児を引き取って殺しのライセンスを与えているDAの組織自体の胡散臭さと、アラン機関と呼ばれる謎の支援団体の実態を含め、先々に何が待っているのか楽しみなフックも多い。しかし何といっても、たきなとの距離をグイグイ狭めてくる千束と、千束に感化されてか次第に表情が豊かになって行くたきなの可愛らしさを含めた、キュートな2人のやり取りがファンの一番の関心ではなかろうか。

 ゲームデザイナーの小島秀夫が、Amazon Prime Videoで偶然『リコリス・リコイル』を観てハマった、という情報がSNSで拡散されたことから評判に火が点いて、放送の度に新たな視聴者を掴んでいる本作。アニメーターやイラストレーターなどプロも交えたファンアートの多さと関連商品の爆発的な売れ行きは、原案担当のアサウラをして「私を初めとした関係者の何割かは……かなりビビってます」と漏らすほどスタッフにとっても想定外だったようだ。千束の胸には人工心臓が入っていて、普通の人間のような鼓動がない、と驚くべき設定も第5話でサラリと明かされ、『リコリス・リコイル』後半戦の展開はどうなるだろうか。

■放送情報
『リコリス・リコイル』
TOKYO MXほかにて放送中
キャスト:安済知佳、若山詩音、小清水亜美、久野美咲、さかき孝輔
原作:Spider Lily
監督:足立慎吾
ストーリー原案:アサウラ
キャラクターデザイン:いみぎむる
副監督:丸山裕介
サブキャラクターデザイン:山本由美子
総作画監督:山本由美子、鈴木豪、竹内由香里、晶貴孝二
メインアニメーター:沢田犬二
プロップデザイン:朱原デーナ
美術監督:岡本穂高、池田真依子
美術設定:六七質
色彩設計:佐々木梓
CGディレクター:森岡俊宇
撮影監督:青嶋俊明
編集:須藤瞳
音響監督:吉田光平
音楽:睦月周平
制作:A-1 Pictures
(c)Spider Lily/アニプレックス・ABC アニメーション・BS11
公式サイト:https://lycoris-recoil.com/
公式Twitter:@lycoris_recoil

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