『ちむどんどん』暢子が重子の大切な“思い出”を呼び起こす 戸次重幸の言葉がヒントに

 NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』第88話では、重子(鈴木保奈美)が再度「アッラ・フォンターナ」を訪れ、暢子(黒島結菜)の手料理を食べることに。ここで暢子は、重子の大切な“思い出”を呼び起こす。

 歌子(上白石萌歌)はこっそり重子に歌を録音したテープを送り、暢子が結婚できるようにと歌子なりの気持ちを見せていた。その様子に、やや呆れつつも暢子の家族が固い絆で結ばれていることを感じた様子の重子。そんな重子は和彦(宮沢氷魚)と共に「アッラ・フォンターナ」を訪れた。その日、暢子が用意した料理は特別なものばかり。はじめに出されたのは前菜のソップレッサータ。重子は美味しいと食べるが、和彦は早くも味が違うことに気付く。次に秋のミネストローネが出されると、そこにはエビの頭が。続くコトレッタ・アッラ・ミラネーゼでは、牛肉の代わりにくじらの肉が使われていた。そこで重子はハッとした。最後に特製のお寿司が出されたときには重子は暢子の意図をはっきりと理解する。

 これは終戦直後の闇市の味をもとにアレンジした料理だったのだ。すると重子は当時のことを愛しそうに語る。「お父さんが戦争から生きて帰ってきてくれた時、本当に嬉しかった」と話し、厳しい環境、恵まれない生活をもう次の世代に味合わせたくないと前置きしつつも、自分にとっては家族との一番しあわせな思い出が詰まっている時間だったと明かした。暢子は、重子のそんな思い出を“宝物”として尊重するためにこの料理を考えたのだった。

 そう、この思い出を尊重するという考えは、暢子がまだ子供の頃に和彦の父・史彦(戸次重幸)がやんばるの小学校の特別授業で話したことだ。

「思い出は必ず、それぞれに違います。その違いを知って、考えて、互いを尊重してください。その先にだけ、幸せな未来が待っていると、私はそう思っています」

 暢子にとってこの授業はとても大きな経験となった。

 第88話ではこの時の様子が回想シーンで流れ、史彦を演じた戸次重幸が優しい瞳で子供たちに語りかける姿が映される。まさかこの経験が今になって和彦との縁談で生きるとは、なんともにくい演出だ。

 このことがあって重子は、暢子と和彦の結婚を許可。重子らしい遠回しな表現ではあるが、「披露宴ではイタリア料理がいい」などチャーミングな言い方で暢子らの結婚を認めるのであった。残念ながら私たちは史彦と重子が披露宴で新郎の側に並んで幸せな笑顔を向ける日を見ることはできない。だが史彦は今も確実に、暢子や和彦、そして重子の心で支えとなって生き続けているのだと感じた。

■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK

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