『ブレット・トレイン』北米No.1発進 『トップガン マーヴェリック』も歴史的ヒット継続中

『ブレット・トレイン』北米No.1発進

 伊坂幸太郎原作映画が北米No.1を獲得、というニュースをお伝えできる日が来ようとは。8月5日~7日の北米週末興行ランキングは、伊坂幸太郎『マリアビートル』(角川文庫)をブラッド・ピット主演で映画化した『ブレット・トレイン』が首位を獲得した。舞台は日本、東京発・京都行きの高速鉄道で展開するノンストップスリラーだ。

 『ブレット・トレイン』は週末の3日間で北米興収3012万ドルを記録したほか、海外57市場では3240万ドルを稼ぎ出し、累計興収は6252万ドル。製作費は9000万ドルとあって黒字化にはもう少しかかりそうだが、まずは好調な滑り出し。ここからはできるだけ息の長い興行的展開が期待される。

 本作のポイントは、高速鉄道(劇中では言及されないが新幹線のこと)という密室で、息もつかせぬアクションとサスペンスが展開するところ。『デッドプール2』(2018年)のデヴィッド・リーチが監督を務め、伊坂原作の緻密なプロットを活かしつつも大胆に脚色した。Rotten Tomatoesの批評家スコアは54%にとどまったが、観客スコアは78%。劇場の出口調査に基づくCinemaScoreは「B+」評価、また別の調査では82%がポジティブな反応となった。

 出演者はブラッド・ピットのほか、ジョーイ・キング、アーロン・テイラー=ジョンソン、ブライアン・タイリー・ヘンリー、アンドリュー・小路、マイケル・シャノン、ザジー・ビーツ、サンドラ・ブロックという映画ファンのツボを押さえた豪華キャスト。日本が舞台とあって真田広之、福原かれん、マシ・オカも出演するほか、世界的人気を誇るラテン系ラッパーのバッド・バニーも登場し、全員がのびのびと役柄を楽しんだ演技を見せてくれる。

 海外市場ではイギリスが350万ドル、フランスが310万ドル、メキシコが300万ドルをという初動を見せた本作だが、むろん、この映画を世界で一番楽しめるのは日本の観客だろう。ハリウッドでも色褪せない伊坂原作の味わいを堪能するもよし、『モータルコンバット』(2021年)に続く真田広之の活躍を楽しむもよし、明らかに狙いすました“やりすぎ日本描写”に突っ込むもよし。日本公開は9月1日だ。

 気になるのは、先週の首位だった『DC がんばれ!スーパーペット』が本作と同じく9000万ドルの製作費、かつ本作を下回るスタートだったにもかかわらず現地メディアで肯定的に捉えられた一方、なぜかR指定の『ブレット・トレイン』には冷ややかな視線が向けられていること。今夏最後のイベントムービーとはいえ、北米での扱いに差があるのは、宣伝費の差を予測してのことか、それともブラッド・ピット主演の注目作だからか?

 その『DC がんばれ!スーパーペット』は、今週末は第2位で、3日間で1120万ドル(前週比-51.3%)を記録。北米興収は4510万ドル、世界興収は8340万ドルと、こちらも黒字化にはもう少しかかりそうな状況だ。

 もっとも今週、この映画と並べて語るべきは、すでに公開中の作品ではなく、HBO Maxでの配信が撤回され、お蔵入りが決まった新作DC映画『バットガール(原題)』だろう。劇場公開には品質が至らなかったためとも、配信作品にしては製作費がかかりすぎたせいともいわれるが、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーの新体制がビジネス面の厳しい判断を下したことは間違いない。ただし予算規模は『DC がんばれ!スーパーペット』も同等であるほか、テスト試写の評価は『バットガール』とドウェイン・ジョンソン主演『ブラックアダム』が横並びだったとされる。新体制への移行後、すでにDC以外の作品も含む複数の企画が打ち切られている以上、今後は戦略の一貫性をより厳重に問う必要がある。

 第3位は『NOPE/ノープ』が3度目の週末を迎え、3日間で849万ドル(前週比-54.3%)を記録して健闘中。『ゲット・アウト』(2017年)や『アス』(2019年)のジョーダン・ピールが監督・脚本を務めた本作は、まもなく北米興収1億ドルを突破する勢い。コロナ禍のオリジナル脚本作品としては指折りのペースで推移している。

 そのほか注目は、歴史的ヒットを継続中の『トップガン マーヴェリック』が、ついに北米興収6億6251万ドルを記録、『タイタニック』(1997年)の6億5936万ドルを抜いて北米歴代ランキングの第7位となったこと。11度目の週末にもかかわらず3日間で702万ドルを稼ぎ出すポテンシャルを発揮し、歴代第6位『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018年)の6億7881万ドルにもぐんぐん迫っている。

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