成田凌が“異世界のコンビニ”に!? 『コンビニエンス・ストーリー』で輝く三木聡のセンス

『コンビニエンス・ストーリー』で輝く三木聡

“異世界のコンビニ”で輝く三木聡監督のセンス

 先に書いておくと、筆者はもともと三木聡監督のファンでした。

 きっかけは1989〜2000年にかけて、三木さんが作・演出を手がけていたシティボーイズのコントライブ。「ピアノの粉末」「リス鍋」「余剰衣服送付委員会」など、タイトルを聞いただけで思わず「何それ?」と興味を持ってしまうシュールなコントの数々は、今なお色褪せない傑作揃いです。

 その後、三木さんは『時効警察』(テレビ朝日系)や『亀は意外と速く泳ぐ』などの監督業に注力していくのですが、どちらかといえばストーリーよりも小ネタに全神経を注いでいる印象でした。10人の映画監督が共著した『ゼロからの脚本術』(誠文堂新光社)の中でも、三木監督は「ストーリーにあまり興味を持てない」「僕のベースにあるのはコント」と記しています。

 『大怪獣のあとしまつ』に対する賛否を傍から見ていると、そういった隙あらば小ネタを差し込みたい気質の三木監督と、東映が手がける“怪獣映画”を期待していた特撮ファン、山田涼介&土屋太鳳という若手キャストの活躍を楽しみにしていた俳優ファンが、三叉路で同時にクラッシュを起こしていたように感じました。

 本作は『大怪獣のあとしまつ』に比べると低予算ですが、“異世界のコンビニ”というちょっと不思議な舞台設定と、三木監督の小ネタのセンスが噛み合って、格段に洗練された印象を受けます。

 さらに、売れない脚本家の成田凌と“リソーマート”の店員・前田敦子の恋愛がシリアスでロマンティックであればあるほど、その合間に挟み込まれる小ネタがよりシュールさを増していく仕組みは巧妙です。

 それでも、直近の三木監督作品らしく、映画全体を貫く「“リソーマート”は本当にこの世のものなのか?」「主人公は元の世界に戻れるのか?」というテーマがあるのですが……その答えはぜひ劇場で確かめてみてください。

■公開情報
『コンビニエンス・ストーリー』
全国公開中
出演:成田凌、前田敦子、六角精児、片山友希、岩松了、渋川清彦、ふせえり、松浦祐也、BIGZAM、藤間爽子、小田ゆりえ、影山徹、シャララジマ
監督・脚本:三木聡
企画:マーク・シリング
配給:東映ビデオ
(c)2022「コンビニエンス・ストーリー」製作委員会
公式サイト:conveniencestory-movie.jp
公式Twitter:@cv_story_movie

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