『ベター・コール・ソウル』複雑に終幕へ 無限に悪へと転落し続けるソウル・グッドマン

『ベター・コール・ソウル』複雑に終幕へ

※本稿には『ベター・コール・ソウル』シーズン6のネタバレを含みます。

 『ベター・コール・ソウル』シーズン6の第11話のエピソードタイトルはズバリ「Breaking Bad」。かつてソウル・グッドマン(ボブ・オデンカーク)が初登場した『ブレイキング・バッド』シーズン2の第8話のタイトルは「Better Call Saul」。かねてより噂されていたウォルター(ブライアン・クランストン)&ジェシー(アーロン・ポール)の再登場にも期待がかかる今回は、過去と現在を何度も往復しながら静かにゆっくりと、そしてより複雑に物語の終幕へと向かっていく。

 まずはソウル・グッドマン事務所の不機嫌な受付係、フランチェスカ(ティナ・パーカー)が再登場する。『ブレイキング・バッド』の事件後、どうにか逮捕を免れた彼女には、逃亡中のソウルと接触することを見越して常時尾行がついていた。なんとか撒いて荒野の公衆電話に辿り着くと、そこに電話がかかってくる。ネブラスカ州はオマハのソウルだ。ここでフランチェスカの口からジェシー・ピンクマン(アーロン・ポール)の車が国境付近で見つかったこと、彼が逃げ切ったことが伝えられる。物語はいよいよ『エルカミーノ:ブレイキング・バッド THE MOVIE』の時間軸を超えたのだ。そして事件を知ったキム(レイ・シーホーン)から電話があったことも告げられる。どうやらジミーの身を案じていたようだ。

 話を聞いたソウルは、気持ちを抑えきれずキムに電話をかける。カメラは道路を隔てた向こう側からソウルの姿を捉えるばかりで、何を話しているのか聞き取ることはできない。ただソウルの身振りは大きく、感情が高ぶっているようだ。ついに激昂した彼は受話器を何度も叩きつけ、電話ボックスを蹴り破る。望んでいた結果ではなかったのだろう。逃亡中のジミーがキムと再会して救われる、といったハッピーエンドは期待できそうにない。

 このエピソードでは『ブレイキング・バッド』シーズン2の第8話「Better Call Saul」をソウルの目線から描いた回想シーンが挿入され、まるで韻を踏むように物語は進行していく。ここはぜひ『ブレイキング・バッド』も併せて見直してほしい。銃を向けられたソウルは咄嗟に「ラロ(トニー・ダルトン)がおまえたちを送ったのか!?」と口走るも、違うとわかれば巧みな喋りで主導権を自分の元へ引き寄せていく。その後の身上調査でウォルターとジェシーの正体を知ると、マイク(ジョナサン・バンクス)の制止も聞かずに“ブルーメス製造者”という金目のウォルターに再接近した。ウォルターとジェシーは“滑りのジミー”にとってカモなのだ。後のウォルターとガス(ジャンカルロ・エスポジート)のコネクションもソウルの便宜がきっかけだったことを考えると、“アルバカーキサーガ”における破滅の引き金はソウル・グッドマンだと言っても過言ではない。

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