『エージェント・キム』は“韓国王道ノワール”の新基軸 かつてないアクションの作り込み

『エージェント・キム』は韓国ノワール新基軸

 韓国ドラマの2026年下半期の台風の目になるのは、『エージェント・キム:リアクティベーティッド』(以下、『エージェント・キム』)だ。第4話まで配信された時点ですでに視聴率20%を超え、2026年に放送されたドラマの中で視聴率1位を記録。さらにSBS金土ドラマ歴代3位に躍り出すなどスマッシュヒットを飛ばしている。

 元・北朝鮮軍有数の工作員であり、その後脱北して韓国国家要員となったキム部長(ソ・ジソブ)だが、現在は妻に先立たれ、反抗期真っ盛りな高校生の娘ミンジ(ソ・スミン)に手を焼くいち銀行員として平凡に暮らしていた。ところがミンジは、校内暴力に巻き込まれたことをきっかけに突然誘拐されてしまう。キム部長はかつてともに秘密作戦に従事した盟友ハンス(チェ・デフン)、ジンチョル(ユン・ギョンホ)の力を借り、ミンジ奪還の死闘に身を投じていく。

 韓国映画やドラマをグローバルコンテンツへと押し上げた大きなきっかけとなった作品のひとつ、人生に行き詰まった登場人物たちが一発逆転を賭けてデスゲームに挑む『イカゲーム』シリーズがそうだったように、韓国コンテンツの代名詞として知られるジャンルが韓国オリジナルのノワールものである。ノワールそれ自体は、元々の発祥はフランス映画であり、広く犯罪映画を意味するのだが、韓国では本ジャンルが独自に進化した。核にあるのは、Return & Revenge。主人公は自分自身か、または自身の大切な存在に対して屈辱的だったり命にかかわる苦しみを与えられたり、命を奪われるなど悲惨な目に遭わされる。主人公はその恨みと悲しみを胸に再起し、相手に立ち向かい、見事怨念を晴らすというプロセスを、濃厚なストーリーテリングとえぐるようなバイオレンス描写で映し出していく。邦画の任侠ものや香港のギャングものとはまたひと味違う過剰にエモーショナルな世界観が、韓国ノワールの真骨頂だった。

 すでに確立されたジャンルであるがゆえに、ジャンルとしての成長もまた天井を打ったと言ってもいい韓国ノワールのオールドスタイルを、『エージェント・キム』は再びなぞる筋立てだ。主演のソ・ジソブに至っては、映画『ある会社員』、さらに2025年のNetflixドラマシリーズ『広場』に続き3回目の“悲しき凄腕キラーキャラ”である。忠誠を誓った裏組織からのけ者にされた挙句弟を無惨に殺されたソ・ジソブが捲土重来し、復讐の鬼として仇を蹴散らしていく王道ノワールだった『広場』が、最旬の俳優や演技派を揃えてもそこまで数字的にも高評価を得られなかったことを振り返ると、『エージェント・キム』に視聴者が熱狂するのはなぜなのだろうか。

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