『ベター・コール・ソウル』は『ブレイキング・バッド』後の時間軸を描く“未知の領域”に

『ベター・コール・ソウル』“未知の領域”に

※本稿には『ベター・コール・ソウル』シーズン6のネタバレを含みます。

 はやる気持ちを抑えてまずは『ベター・コール・ソウル』シーズン1の第1話冒頭に遡ろう(ついでにお近くのシナボン店舗を検索することもお勧めする)。シーズン6の第10話はネブラスカ州はオマハでジーン・タカヴィクとして潜伏するソウル・グッドマン(ボブ・オデンカーク)が描かれる。『ブレイキング・バッド』という結末へ向かって進んできた前日譚パートは終わり、いよいよここからは“『ブレイキング・バッド』後”の時間軸を描く未知の領域。シーズン1〜5までの冒頭約5分で描かれてきたジーンのパートから物語が連続しているため、復習は必須だ。

 シーズン4の第1話、勤務中に倒れ病院へ搬送されたジミーは精密検査の結果、問題なしと診断され帰宅の途につく。存在を消された身として、病院に担ぎ込まれるような“目立つ”ことは命取りになりかねない。ところが乗り込んだタクシーの運転手がバックミラー越しに不可解な目線を向けてくる。この男はジーンの正体に気付いたのだろうか? それとも誰かが差し向けた殺し屋なのだろうか? 身の危険を感じたジミーは途中で降車するも、タクシーはなかなか立ち去ろうとしない。

 シーズン5の冒頭、ジミーがモールのベンチで休憩していると通りすがりの男が声をかけてきた。あの時のタクシー運転手だ。ジェフと名乗るその男は「あんたが誰だかお互いにわかっている」とジーンの正体を言い当て、ジミーはやむにやまれず「Better Call Saul」とソウル・グッドマンのキャッチコピーを再現してしまう。慌てて人消し屋エド(演じるロバート・フォスターは2019年に他界した)に再依頼をかけるも、何を思いついたのか「自分で何とかする」と取り消した。今回のシーズン6の第10話はこのすぐ後の話だ。

 最終回を直前にして重要なエピソードが全編モノクロで描かれるのは今やPeak TVの通例。『ベター・コール・ソウル』もまた、シーズンを追う毎にグレードを上げてきた美しい撮影で冬のオマハを捉えている。そんな冬道の吹き溜まりに、車椅子がつかえ困惑している老女マリオン(キャロル・バーネット)がいる。エピソードタイトルでもある迷い犬ニッピーを探す貼り紙を持って現れるのがジーンだ。彼は言葉巧みにマリオンに近付くと、彼女を自宅まで送り届ける。サンドパイパー案件でも老人ウケ抜群だった“滑りのジミー”の人心掌握術は健在。すっかり打ち解けて談笑していると、そこにマリオンの息子が帰ってくる。あのタクシー運転手、ジェフだ(シーズン4〜5で演じていたドン・ハーヴェイがスケジュールの都合で降板しており、今回はパット・ヒーリーへ交代している)。

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