『東京リベンジャーズ』実写化はなぜ大成功した? 北村匠海が観客とヤンキーの橋渡し役に
2021年、実写劇映画で最大ヒットとなった『東京リベンジャーズ』が早くもテレビで放送される。
昨年、TVアニメ放送をきっかけに急速に人気を獲得したこのシリーズ。本作が公開されたのが、ちょうどアニメ放送シーズン中だったこともあり、その追い風を受けて実写映画も45億円の興行収入を記録した。
本作はヤンキーものであるが、従来のヤンキーものを支持してきた層以外の心をがっちり掴んだ作品だ。クールな外見のキャラクターと男同士の濃密な関係性が、女性ファンを捉えたという点も大きいが、本作はそれ以外にもこれまでのヤンキーものにはない要素がある。すでに現実には希少な存在となり、フィクションの中でしか見たことのない人も多いだろうヤンキーという題材を、本作はいかに現代でウケるものにしてみせたのか、考えてみたい。
ヤンキーものとループものの組み合わせはどんな効果を生んだか
本作の発明は、ヤンキーものとSFタイムリープを組み合わせたことにある。ヤンキーものを現代で展開する上で、この異色の組み合わせが大きく効果を発揮した。
まず、現代では本物のヤンキーを見かけることは少なくなった。ヤンキーという存在自体は下火になったが、どういうわけかマンガでは一定のジャンル規模を維持し続け、なんとなくみんなそういう属性の存在がいることは知っている。世代によっては「昔は近所に普通にいたよね」と言うだろうが、より下の世代では「氣志團みたいなやつでしょ」と言うかもしれないし、『クローズ』『WORST』のようなマンガやアニメ、あるいは映画でしか知らない世代もいるだろう。いずれにしても、過去の記憶かキャラクター化した虚構の存在として認知され、今ここにいるリアルな存在だと実感を持って認識している人は多くない。
現代にいないヤンキーを描くならば、過去に行ってしまえばいい。主人公のタケミチは、ヤンキーが過去のものであることを象徴するように、「元ヤンキー」という設定だ。あることをきっかけに学校をやめ、社会に放り出されて打ちのめされており、カッコいいヤンキーを目指した時代は過去のもの。「こんなはずじゃなかった」という思いを抱えて人生を生きている。
タイムリープ能力を獲得したタケミチは、かつての恋人ヒナが東京卍會という組織に殺されたことを知ると、その結末を書き換えるために、ヒナの弟、直人の助けを借りて何度も過去と現実を行き来する。この東京卍會という組織は現代では半グレの犯罪者集団と化しているが、かつては義理に厚く、曲がった行いを許さない真っ当な不良集団だった(不良なのに「真っ当」と表現するのも変だけど)。タケミチは、過去の東京卍會に近づきリーダーの佐野万次郎ことマイキーが道を踏み外さないようにすることで、ヒナを救う道を模索することになる。
本作の過去パートで描かれるヤンキー像は、不良の理想像であり、リアルとは異なる戯画的な存在だ。フィクションで描かれてきた虚構のヤンキー像の世界に、今の感覚と記憶を持ったままのタケミチがタイムリープで入り込むことによって、現代の観客は、タケミチと同じ目線で疑似体験できる構成になっているのが作劇のポイントだ。リアルでは味わえないヤンキーワールドに飛び込んだような感覚を味わえるわけだ。
ストレートにヤンキーそのものを主人公にしても、現代の観客にとって身近な存在ではないので共感してもらいにくい。現代人の感覚を持った主人公に、過去のヤンキー世界に行ってもらうという構図が、現代の若者とヤンキーを橋渡しすることに成功した秘訣だ。