『ジュラシック・ワールド/炎の王国』は“アニマルライツ”がテーマに 後半は別作品?

『ジュラシック・ワールド』続編の新しい風

 ついにシリーズ完結編となる『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』が7月29日に公開を迎えた。それに合わせて、日本テレビ系『金曜ロードショー』にて、前作に当たる『ジュラシック・ワールド/炎の王国』が放送される。

 本作は『ジュラシック・ワールド』の惨劇を経たあと3年後、崩壊したパークが位置するイスラ・ヌブラル島の火山が大噴火の危機に直面するところから始まる。前作でラプトルたちの調教師として活躍したオーウェン・グレイディ(クリス・プラット)はすっかりご隠居モードで人目につかないところで暮らそうとしていたが、クレア・ディアリング(ブライス・ダラス・ハワード)は逆に恐竜たちの保護活動に熱心になっていた。

 クレアといえば、1作目を観ている人はご存知の通り、恐竜はあくまで“金の卵”としてしか見ていなかった、ハイヒールでティラノサウルスの前を疾走したあの女性である。本作の衝撃的なところは、前作と比べてこのクレアとオーウェンのキャラクターとしての役割が若干入れ替わっていることにある。「島に取り残された恐竜を保護しに行こう」と誘うクレアだがオーウェンは断る。子供の頃から手塩にかけて育てたラプトルのブルーを見殺しにしようとするのだ。

 この2人の意見の相違や会話にも通じるように、本作のテーマは「アニマルライツ(動物の生存権)」である。アメリカの上院の特別委員会は、今回の噴火に対して政府が関与するか否か、他の絶滅危惧種のように恐竜も保護するべきかという点について討論する。しかし、そこである人物の発言が重要視されるのだ。『ジュラシック・パーク』に登場し、続編の『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』では主人公として活躍したカオス理論学者、イアン・マルコム(ジェフ・ゴールドブラム)である。彼は恐竜の運命を火山に託すべきであり、今こそ人間が歪めた自然界の流れを正す時と主張。人間がこれまでテクノロジーを進歩させ、神の真似事をして毎度制御が効かなくなっていることを取り沙汰した。それは核の制作と保有であり、近年の遺伝子操作問題に見受けられる。

 『ジュラシック』シリーズは1作目からこの「イカロスの翼」をテーマにした作品であるが、マルコムの存在はシリーズを通して唯一この恐竜にも技術にも反論を唱えてきた立場にある。つまり彼が、原作者マイケル・クライトンや前シリーズの監督スティーヴン・スピルバーグが映画を通して伝えたかった大切なメッセージを伝達するキャラクターなのである。彼は最新作『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』にも登場し、同じように私たちに問いかける。この彼の問いを、考え抜くことこそ『ジュラシック』作品を通して私たちがしなければいけないことなのだ。

 とはいえ、恐竜が死んでしまうことはとても悲しい。マルコムの発言ももっともであるが、見殺しにすることの残酷さも痛いほどわかる。なぜなら、恐竜は人間の技術によって勝手にこの世に蘇らされた存在。長い眠りからようやく覚めて、再び大地を歩くことができたのに、また人間の都合で絶滅を迎えなければいけないなんて、勝手すぎる。そもそも、こういった責任の取れなさが、マルコムの提唱する「もうお前たちこういうことやめろよ」に含まれているわけなのだが、クレアはオーウェンを説得して仲間たちと島に向かう。

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