『ジュラシック・ワールド/炎の王国』は“アニマルライツ”がテーマに 後半は別作品?

『ジュラシック・ワールド』続編の新しい風

 本作は冒頭のティラノサウルスのシークエンスを含め、かなり美しくて迫力満点の映像に溢れている。メガホンを取ったのは、前作に変わり『永遠のこどもたち』のJ・A・バヨナ。彼の作品特有のダークさが本作にも反映され、シリーズにおいて新しい風となっているわけだが、ところどころその新風が『ジュラシック』シリーズにおける“精神”を失わせたようにも感じる。

 『ジュラシック・パーク』といえば、1作目からアニマトロニクスを使用して恐竜のリアルさを追求した映画であり、当時の最新VFX技術と組み合わせて、29年経った今でも色褪せない作品として評価されている。ところが『ジュラシック・ワールド』シリーズは1作目も1体のみ、この『炎の王国』でも5体のみのアニマトロニクスが使用され、残りはフルCGIなのだ。そのため、恐竜の味わい深さがやや欠けていたり、本作に至っては最大の敵となるインドラプトルが人間を騙すシーンでニヤリとしたり、なんだか“カートゥーンのキャラクター”のようになってしまっている。遺伝子操作をして蘇っている時点で自然ではないかもしれないが、それでもシリーズを通して生命体としては“自然”な存在として恐竜が描かれてきたのに対し、インドラプトルの描写はそれらを逸脱するようなものだったと感じる。

 しかし、怪我を負ったブルーや麻酔によって眠らされて搬送されるティラノサウルスなどクロースアップになったときにかなりリアルな質感を感じられるシーンも盛りだくさん。何より、島が火山の噴火に飲まれるシーンは号泣必至だ。ただ、その後の展開が別映画に近い雰囲気になっているため、本作における“『ジュラシック』映画感”というのは前半までのようにも感じる。なにせ、映画の後半には恐竜のクローニングについてずっと描いてきたシリーズにとって“禁じ手”とも言える、タブーな展開が待ち受けている。その新たな問題が、リアルな恐竜を描いてきたことで唯一無二のSF映画とも言えた『ジュラシック』シリーズの特別感、精神を失わせてしまった。

 実際、その問題は新作『新たなる支配者』にも引き続いており、それがあった上で最新作が『ジュラシック』シリーズの映画としてどう完結するのか、ぜひ見届けていただきたい。

■放送情報
『ジュラシック・ワールド/炎の王国』
日本テレビ系にて、7月29日(金)21:00~放送
※本編ノーカット
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、コリン・トレボロウ
キャラクター原案:マイケル・クライトン
監督:J・A・バヨナ
脚本:コリン・トレボロウ、デレク・コノリ
出演:クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード、レイフ・スポール、ジャスティス・スミス、ダニエラ・ピネダ、ジェームズ・クロムウェル、トビー・ジョーンズ、テッド・レヴィン、B・D・ウォン、ジェフ・ゴールドブラム、ジェラルディン・チャップリン、イザベラ・サーモン
Jurassic World Fallen Kingdom: TM & (c)2018 Universal City Studios Productions LLLP and Amblin Entertainment, Inc. All Rights Reserved.

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