『ちむどんどん』“諦めない”を実践する比嘉三姉妹 縁談を軸に露呈する和彦の不自然さ

『ちむどんどん』露呈する和彦の不自然さ

 NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』第77話は、開口一番に和彦(宮沢氷魚)の母・重子(鈴木保奈美)が結婚を反対する場面から始まる。

 あまりの衝撃に口を開けてショックを受ける暢子(黒島結菜)をよそに、重子は事前に聞いていた情報をもとに調べた暢子と、彼女の家族の素性を話していく。この短い期間で良子(川口春奈)と石川家の関係まで知られてしまっているが、これ幸いにも賢秀(竜星涼)の情報は「千葉の牧場で働いている」くらいに止まっている。比嘉家がいまだに借金を返しきれていないことが重子の調査によって明かされたわけだが、その際に暢子が「紅茶豆腐で失敗して……」という発言にピンときていなかったので賢秀の詐欺行為の数々までは調べられていないようだ。しかし、賢秀といえば良子の縁談の際も金を持ち逃げしたとんでもない男なので、暢子の縁談も彼が何らかの形でダメージを与えないことを願う。

 とはいえ、賢秀に関してはここ最近、なんだか落ち着いてきた印象だ。家族を一切顧みない、破天荒さが見ていてしんどい部分もあったが、ここ数週は逆に彼のマイペースさが“癒し”にもなりつつある。それは、賢秀の騒動に慣れきったからこそ辿り着ける境地なのかもしれない。

 さて、重子は暢子と和彦の結婚を改めて反対する。家柄や家の格が釣り合わなければ、お互いの家族の常識も合わないという主張の重子。それに対し和彦は反対するが、「大野愛(飯豊まりえ)さんとは何で別れたの?」と突っ込まれる。暢子や和彦など、周りを気にせずに自分の好きに動くキャラクターに対し、現実的に厳しい言葉を投げかける彼女は視聴者の代弁の役割も担ってくれるかもしれない。そもそも、愛と別れて間もないのに暢子と結婚すると親に紹介する和彦も和彦だ。加えて、沖縄から「会わせたい人がいる」と重子に連絡した際、彼女は「久しぶりの連絡」と言っていたが、愛との縁談が進む過程ではあまりコミュニケーションをとっていなかったのだろうか。

 そこに少し不自然さがありつつ、最も不自然なのは和彦の態度である。厳しい母親だとわかっていて暢子を紹介したのなら、事前にサーターアンダギーよりも上等な菓子を用意した方が良いかもとか、うちの母はこうだから、こう話した方がいいとか、彼がこの顔合わせをリードしなければいけなかったはず。しかし、至極まともな意見を言う母親に対して「愛していればそれでいい!」、「僕は好きでお母さんの子供に生まれたわけじゃない」などただ癇癪を起こして彼女を責める。

 その背景には、両親が家同士の勝手に決めた縁談で結婚したこと、そのせいで母と父のソリが合わずに幼い和彦も居心地の悪さを感じていたことが明かされた。母親を抜きに話を進めようと言う和彦に対し、暢子は「披露宴をしたい、諦めないで頑張ろう」と反対した。

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