『空白を満たしなさい』が描く絶望と希望 柄本佑の感情むき出しの演技から目が離せない
思わず息を呑んだのは、徹生が車内でもう一人の自分と向かい合うシーンだ。第1話で描かれた徹生と佐伯による車内での長尺の場面。そこで徹生が見ていた佐伯もまた幻覚であり、ボロボロに疲弊した徹生自身が憎しみ、怒りの矛先を自分自身に向ける衝撃の真実。第3話までを観て、筆者はこの作品において徹生は妻の千佳(鈴木杏)や佐伯の話、または演技を受ける側だと感じていたが、第4話はその考えが逆転する、感情を剥き出しにした柄本佑の演技に目が離せなかった。描かれるのは生前の“絶望”と、これからもう一度家族で歩き出す“希望”だ。
その希望の象徴として徹生が千佳と璃久(斉藤拓弥)と3人でアスレチックで遊ぶ家族の絆を感じさせるラストのシーンがあるが、そこで千佳は幼き自身の姿を見る。「私は世界一心が汚い子供です」と書かれたTシャツを着た少女ーー。
最終話では、新たに浮かび上がる千佳が抱えてきた秘密を焦点に、NPO法人の池端(滝藤賢一)といったさらなる新キャストも登場する。
■放送情報
『空白を満たしなさい』【全5回】
NHK総合にて、毎週土曜22:00〜22:49放送
出演:柄本佑、鈴木杏、萩原聖人、渡辺いっけい、うじきつよし、藤森慎吾、ブレーク・クロフォード、風吹ジュン、阿部サダヲほか
原作: 平野啓一郎『空白を満たしなさい』
脚本:高田亮
音楽:清水靖晃
制作統括:勝田夏子(NHKエンタープライズ)、落合将(NHK)
演出:柴田岳志(NHKエンタープライズ)、黛りんたろう
写真提供=NHK