黒島結菜が“悪役”になる画期的な『ちむどんどん』 愛と智の今後の人生を祈って
愛も智も幸せになりたいだけなのだ。日々、自分の夢や仕事に打ち込んで、真面目に生活を営んでいる。たとえ恋愛で自分が選ばれなくても悲しむことはあっても決して相手を貶めたり暴力を奮ったりしない。そうすることで、恋愛ドラマに必ず存在する「当て馬」や「意地の悪いライバル」として済まされることのない、彼らなりの正義のようなものに光が当たる。
智と愛は「当て馬」でも「ライバル」でもましてや「障害」でもない。むしろ、主人公とその相手役の暢子と和彦のほうに問題があると感じることはドラマとして極めて画期的だろう。
自分の想いを貫くことは正義ではなく誰かにとって悪にも成り得る。『ちむどんどん』を観て思い出すのは、子供のときに観たアニメーションだ。主人公が自分たちを脅かす者を倒そうと闘い続け、最後の最後に、相手にとっては自分たちこそ彼らを脅かす悪の存在であったことを痛感するというポスト勧善懲悪物語であった。
善と悪は表裏一体であることを子ども向けアニメで筆者は学んだ。にもかかわらず、大人になってもいまだに、自分の考えや行いを正しいと信じることと、常に、自分が誰かの尊厳を損なっているかもしれないと考えながら生きていくことが容易にならない。いつだって心を悩ませる。
『ちむどんどん』を観た子どもたちが愛や智の人生に思いを致し、それがきっかけで人間とは何か、異なる考えをもった人と人はいかに融和していけるかという哲学的なことを考えるようになったらいいなあと思う。
■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK