『プリズム』杉咲花に舞い降りた奇跡 『恋マジ』最終回の“その先”としての側面も

『プリズム』杉咲花に舞い降りた奇跡

 ここで思い出さずにはいられないのが、同じく浅野が手がけた前クールのドラマ『恋なんて、本気でやってどうするの?』(カンテレ・フジテレビ系)だ。同作はあくまでも男女3組の恋愛模様を描いた作品だったが、最終話でヒロインの良き相談相手の人物が同性愛とアセクシャルをカミングアウトしたことが物議を醸した。物語はそのまま幕を閉じたが、浅野は本作においてその続きを描こうとしているようにも感じる。

 色んな価値観を持った人々が巡り会う時、そこには新たな気づきとともに、ヒリヒリとした痛みも生じる。現実はテラリウムみたいに美しい瞬間だけを切り取って、保存することはできない。決して避けることはできない負の側面も引っくるめた、プリズムのようにそれぞれの思いが交錯する人間ドラマが映し出されていくのだろう。

 第1話はそこに繋がる不穏な空気を登場人物全員が携えていた。どこか根無し草のように頼りない皐月と、如何なる時も自然体だが、感情の奥底が見えづらい陸。杉咲と藤原が作り出す2人の脆さを孕んだ絶妙な距離感が特に後を引く。そこに波紋をもたらすのは、ラストで登場した自然の中で暮らす男(森山未來)なのかもしれない。

■放送情報
ドラマ10『プリズム』
NHK総合にて、毎週火曜22:00〜22:45放送<全9回>
出演:杉咲花、藤原季節、森山未來ほか
作:浅野妙子
音楽:谷口尚久
制作統括:小松昌代(NHKエンタープライズ)、岡本幸江(NHK)
写真提供=NHK

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