『プリズム』杉咲花に舞い降りた奇跡 『恋マジ』最終回の“その先”としての側面も

『プリズム』杉咲花に舞い降りた奇跡

 ラブストーリーの名手・浅野妙子が手がけるドラマ『プリズム』(NHK総合)が7月12日より放送を開始した。主演は、朝ドラ『おちょやん』以来のNHKドラマ出演となる杉咲花。壮絶な人生を送りながら、俳優としての道を切り開いたバイタリティ溢れるヒロインを演じた彼女が、今回は真逆ともいえる役に挑戦している。

 主人公の皐月(杉咲花)は夢も恋愛も諦めかけた内向的な女性だ。園芸店でアルバイトをしながら声優を目指しているが、なかなか芽が出ずにいる。それもそのはず。彼女には“必死さ”が足りないから。何か劇的な出来事、それこそドラマの主人公みたいに誰かから選ばれたいと心のどこかで願っているが、そのために努力したら選ばれなかった時の傷はより一層深くなる。だから最初から希望を持たず、平凡な日常に身を置いている彼女の姿に共感する同年代の若者はきっと多い。

 第1話では、そんな皐月に小さな奇跡が舞い降りた。いち早く声優デビューが決まったルームメイト・綾花(石井杏奈)に頼まれ、とある庭園の草むしりのバイトに出かけた皐月。その庭のデザインを担当している人物こそ、皐月の人生を変える陸(藤原季節)だった。陸は皐月がつくるテラリウムに惹かれ、彼女を次に自身が手がける庭園のリガーデンプロジェクトに誘う。

「きれいだと感じるものをきれいなまま閉じ込められたらいいのになぁって」

 そう語る皐月にとってテラリウム作りは箱庭療法みたいなもので、小さなガラス容器の中には彼女の内面世界が広がっている。それを認めてもらえたという事実だけでどうしようもなく舞い上がってしまいそうなのに、陸は不思議な引力をもって皐月の心のひだに触れていく。

 出会って間もない皐月の仕事に対する甘さを容赦なく指摘し、彼女とその父親である耕太郎(吉田栄作)との関係にも深く踏み入る陸。その強引さは時に恐怖ともなり得るが、自己肯定感の低い皐月には現状を打破してくれる魅力的なヒーローとして映る。実際、陸のおかげで皐月は両親の離婚のきっかけを作った耕太郎の現在のパートナー・信爾(岡田義徳)と向き合うことができた。

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