大沢一菜×井浦新×森井勇佑監督が過ごした『こちらあみ子』の21日間 撮影現場は遊び場

大沢一菜×井浦新が語る『こちらあみ子』

 2019年に『むらさきのスカートの女』(朝日新聞出版)で芥川賞を受賞した小説家・今村夏子。『星の子』が芦田愛菜主演で映画化されたり、映画『花束みたいな恋をした』で主人公ふたりの好きな作家として登場したりと、その名前を耳にする機会は増えてきたことだろう。

 彼女のデビュー作である『こちらあみ子』(初出時のタイトルは『あたらしい娘』)が、このたび実写映画化された。監督を務めたのは、『星の子』の大森立嗣監督の助監督だった森井勇佑。応募総数330名の主役オーディションを勝ち抜いた新星・大沢一菜があみ子役で演技初挑戦し、井浦新と尾野真千子があみ子の両親を演じる。

 『こちらあみ子』は、広島を舞台にした少女の成長の物語。風変わりな小学5年生のあみ子(大沢一菜)が見ている世界と他者との“ズレ”を、清濁混ぜ合わせて無垢に描いていく。リアルサウンド映画部では、大沢一菜と井浦新の対談インタビューを実施……の予定だったが、写真撮影→インタビューの間に急遽、森井勇佑監督も参加してくれることに。フレキシブルな3人による息の合った舞台裏トークをお楽しみいただきたい。(SYO)

(3人、本作のロケ地である広島県のお菓子を食べながら)

大沢一菜(以下、大沢):めっちゃうまい!

井浦新(以下、井浦):きっと終始こんな感じになっちゃうので、気にせず始めてください(笑)。

――はい(笑)。

大沢一菜が体験した、初めての映画作り 「取材が一番緊張する(笑)」

――ではまず、劇場公開を目前に控えた迎えた今のお気持ちを教えて下さい。

大沢:嬉しい気持ちと、ちょっと恥ずかしい気持ちがある。

井浦:僕らのあみ子が、みんなのあみ子になっちゃうなぁって……。いままでは僕らだけのあみ子でしたから。約3週間、みんなで過ごした瞬間の積み重ねがたくさんの人に届くのは楽しみでもあり、寂しくもあります。

森井勇佑(以下、森井):僕もそればっかり思ってます。あみ子がどう生きていってくれるかなという想いと、手の届かないところに行ってしまう感覚がありますね。

――かけがえのない時間が流れていた現場だったんだなと感じます。お昼寝タイムなどもあったそうですね。

井浦:コンプライアンス的にそうだったというわけじゃなく、(大沢)一菜が寝たら休憩タイムに入る(笑)。それが森井組のルールでした。

大沢:中学校のロッカーの上でも寝てた(笑)。

森井:なんかぼんやりしてきたなと思ったら、その合図ですね(笑)。

井浦:反応悪くなってきたなと思ったら、寝かけてて(笑)。

森井:朝は信じられないくらい元気なのにね。

大沢:朝にエネルギーを使いすぎて、夜までもたなかった(笑)。

井浦:一菜的にはどうだったの? 現場では一菜があみ子になっていくというより、あみ子が一菜になっていっているような気がしていて。森井監督からは「セリフはあるけど自由に楽しんで」と言われていたけど、きっと一菜も色々と考え・感じながらやっていたと思うし。それで途中でガス欠になっちゃったのかなって。

大沢:いや、疲れたりはしなかったけど……(考える)。

井浦:そっか。眠たくなったから寝てたんだね(笑)。

大沢:そう。エネルギーが切れちゃった(笑)。でも、あみ子を演じていて「疲れたな」と思うことはなかった。長いセリフのときは口が疲れちゃったけど、それくらいかな。

井浦:昼寝した後、夜になるほど元気になっていくんです(笑)。大人たちはぐったりしているのに、一菜だけが元気で。

大沢:みんなと真逆。昼寝しているときにみんなが元気で、元気になったらみんなが死んでる(笑)。

井浦:撮影帰りの車の中なんて、うるさいのなんの(笑)。こっちはふらふらでご飯もスキップしようかなって思っているくらいなのに、一菜はすごく元気で。

森井:あれはすごかったですね(笑)。

大沢:すごく騒いでいた記憶はある(笑)。

――毎朝スタッフの皆さんに大沢さんがパンチして回るのが日課だったとか……。

大沢:だってみんな眠そうだったから。気合を入れさせなきゃ! と思って。

森井:あれはそういうことだったんだ(笑)。

大沢:そう。起こさなきゃと思ってた。

井浦:尾野(真千子)さんと自分にはその洗礼がなかったのですが、それはきっと撮影の準備段階からずっと話していて、やる必要がなかったからなんだね。

森井:控室のテンションと、現場のスタッフのテンションに温度差がありすぎたんですね……(笑)。

井浦:控室に(あみ子の)家族4人でいると、朝からああだこうだと話して、もう始まっちゃっているんです。テンションが上がっちゃってる(笑)。

森井:確かに(笑)。僕らが撮影の準備を整えてしーんと待っていると、向こうからものすごい勢いで叫びながら一菜がやってくる感じでした(笑)。

――大沢さんのクランクインは、学校の坂を下りてくるシーンと伺いました。

森井:なんでもないところから始めたかったんですよね。

大沢:カメラで撮られてるのかな? って思うくらい緊張しなかった。どんどん撮影していくなかで、「次の日(のシーン)は楽しそうだな」みたいに、楽しさが増えていった感じ。こういう取材が一番緊張する(笑)。

――なるほど(笑)。

井浦:毎日、撮影現場という遊び場にいるような感じで、みんなで一緒にご飯を食べて撮影して、やりたいように過ごした日々でした。

――そんななかで、大沢さんが座長として気合を入れてくれていたわけですね。

森井:まさに“座長”でしたね。

井浦:本当に。一菜を中心に現場が回っていました。

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