映画の魅力に溢れた『ザ・フォッグ』の強靭な存在感 現在だからこそ生まれるその価値とは

今だからこそ生まれる『ザ・フォッグ』の価値

 この100年に及ぶ歴史的な“罪”は、アメリカの白人入植者の侵略の歴史を想起させるところもある。80年代における新しい映像表現と、この過去をめぐる文学的表現というのが、本作を特徴づける核となっている。そして、もうすでに“ヴィンテージ”となった本作をいま鑑賞することに、ある種の充実感を覚えるはずである。

 『ストレンジャー・シングス 未知の世界』や『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017年)などに代表されるように、ここ10年ほどの間、映画、ドラマなどにおいて80年代の要素をリバイバルするブームが起きていた。本作Blu-rayの特典の一つである、1980年アメリカ公開時のオリジナルビジュアルポスター(A3サイズ折り込み)が、いまレトロな魅力を放つようになったのと同じく、本作の内容もまた、時を経たからこその充実感を覚えるものとなっていると感じられる。

ザ・フォッグ

 過去の映画をトレンドやファッションのようにとらえ直すことに拒否感がある観客もいるかもしれないが、タランティーノ監督や黒沢清監督が自作においてカーペンター作品にリスペクトを捧げているように、過去の作品から学び、自分たちの世代でその要素に新たな意味を与えていくことは、文化が連綿と受け継がれていくなかで自然な姿勢でもある。カーペンター監督の出世作の一つである『ジョン・カーペンターの要塞警察』もまた、ハリウッドの名匠ハワード・ホークス監督の西部劇『リオ・ブラボー』(1959年)への愛情を込めて、その内容をより現代的にアレンジしたものだったのである。

 『ザ・フォッグ』公開後、40年以上の時のなかで変わったもの、そして変わらないものが世界にあることを、われわれは知っている。そんな現在の目で鑑賞することで、過去の文化や作品は新たな可能性を持つこととなる。本作は、その分かりやすい象徴の一つとして、強靭な存在感を放つ一作であるとともに、それ自身が文化の重要な橋渡し役であったといえよう。そこから新たに何を汲み取り、学んでいくのかは、われわれ一人ひとりのセンスにもかかっているのだ。

■リリース情報
『ザ・フォッグ』4Kレストア版
Blu-ray発売中
※4Kレストア版マスターを使用したフルHD Blu-rayとなります。

ザ・フォッグ

価格:4,800円(税別)
仕様:16:9[1080p Hi-Def]スコープサイズ/日本語字幕/英語DTS-HD Master Audio 5.1ch/G/アメリカ/1980年/収録分数:約89分

【封入特典】
1980年アメリカ公開時のオリジナルビジュアルポスター(A3サイズ折り込み)

【特典仕様】
大島依提亜デザイン アウタースリーブケース

監督:ジョン・カーペンター
製作:デブラ・ヒル
脚本:ジョン・カーペンター、デブラ・ヒル
出演:エイドリアン・バーボー、ジェイミー・リー・カーティス、ジャネット・リー 
発売元:ロングライド
販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
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