楠木ともりが『BASTARD!!』ヨーコに命を吹き込んだ 優れた表現力のルーツはどこに

 6月30日からNetflixで配信がスタートした『BASTARD!! ー暗黒の破壊神ー』。強大な魔力を持った主人公ダーク・シュナイダー(ダーシュ)が封印を解かれ、闇の反逆軍団と戦いを繰り広げていく物語。自分勝手で女たらしのダーク・シュナイダーに心を揺らす大神官の娘ティア・ノート・ヨーコ役を、『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』の優木せつ菜、『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』のレンなどで知られる、楠木ともりが熱演。セクシーなシーンにも果敢にチャレンジし、新たな魅力を開花させていて注目だ。

『BASTARD!!』

 本作は、1988年に『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載が開始されたダークファンタジー作品で、科学文明が崩壊した後に訪れた剣と魔法が支配する世界を舞台に、自分勝手で女たらしの主人公が大暴れする。SF、ファンタジー、お色気、コメディといった様々な要素が渾然一体となった、“少年漫画の夢”が満載された作風で、コミックスは累計3000万部を超える、時代と世代を超えた人気の作品だ。

 主人公であるダーシュは、ヨーコが弟のように可愛がるルーシェ・レンレンにキスをすることで封印が解かれる。強力な魔法で世界を支配することを目論み、周りに傍若無人な態度を取るダーシュだが、ルーシェの経験を共有することから、ヨーコには頭が上がらない。楠木ともり演じるヨーコは愛情深く、強い正義感を持ち暴力には決して屈せず、その一方で乙女の恥じらいと奥ゆかしさも見せるなど、非常に多面的な魅力を放っている。ダーシュを唯一コントロールできる存在であり、物語を展開させるキーパーソンでもある。

 楠木は瑞々しくも芯のある演技で、ヨーコに命を吹き込んだ。ダーシュを子供のように叱りつける姿はどこか母親のようでもあり、ダーシュが時折見せるやさしい横顔にドキッとする表情はまさしく乙女。敵に捕まってしまった時の苦悶の表情や、ダーシュが他の女性と一緒にいる現場を見てしまった時の嫉妬の表情。今まで楠木が演じて来たキャラクターにはあまりなかったシチュエーションや表現ではあるものの、ヨーコというキャラクターと一心同体のような一体感で観る者を引き込む演技を披露している。

 楠木は「ヨーコさんはヒロインでありながらも、しっかりとした強さを持っています。それでいてダーシュ、ルーシェには恋ではなく愛を持って接していて、あくまで姉のような母のような愛情を主軸に、怒ったり照れたりするギャップも見せてくれます。そういった面は現代のヒロイン像とは異なる魅力だと思いました。演じる上ではその良さが伝わるようにというのはもちろん、原作ファンにも納得してもらえるようにとアフレコに挑みました」(※1)とコメントし、ヨーコ役への力の入れようが伝わる。

 楠木ともりは2017年に声優デビュー。『メルヘン・メドヘン』の鍵村葉月、『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』のレン/小比類巻香蓮、『デカダンス』のナツメなど、早くからいくつもの主人公役を射止め、先輩共演者からの信頼も厚い。

 『ソードアート・オンライン』では、本作でも共演している日笠陽子や興津和幸、『デカダンス』では小西克幸や鳥海浩輔、Netflixで配信中の『TIGER & BUNNY 2』では、平田広明、森田成一、津田健次郎などと共演。まだ22歳である彼女にとっては、親子ほど年の離れたベテランとの共演はどれほどのプレッシャーだったことか。しかしそれが、彼女を強く成長させた。様々な現場で先輩たちの胸を借り、持ち前の度胸と表現力で存在感のある演技を発揮してきた。インタビューでは、ダーシュ役の谷山紀章からも「ともりる(楠木さん)は100点だよ! いや、102点だね」(※2)と冗談交じりで太鼓判を押され、「本当ですか!」とうれしそうな表情を見せている。

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